No.644(2019.4.4)
《紹介》
やっぱりいらない東京オリンピック
(岩波ブックレット993)
少し立ち止まり、もう1回オリンピックが日本社会に及ぼしている/及ぼすであろう影響についてしっかり考える基本的な材料を提供する。
これが本ブックレットの目指すところである。
具体的には、2013年の招致決定以降噴出している諸問題を、
①東日本大震災からの「復興」と経済、
②参加と感動、
④言論の自主統制と社会のコントロール
という4側面から、事実を網羅し、問題点を一つひとつ顕彰する。
そして2020年東京大会に関する新規で真剣な議論を喚起しながら、オリンピック開催を批判する論点と材料を読者に提供していく。(はじめにより)
1-5 「どうせやるなら派」と責任の空洞化
招致や開催に批判的であった人が、もう「後戻りできない」のだから、「新しい発想で」、「別の楽しみ方を」と言い出す。そういう人たち=「どうせやるなら派」は、2020年東京大会の矛盾や問題を覆い隠すだけでなく、むしろ開催の推進力となる。こうした機運は、オリンピックがグローバル資本主義の巨大な見世物への変質の道程と親和性がある。
2-3 オリンピックと参加型権力
合計11万人をつのるオリンピックボランティアには参加型権力のレトリックがある。ナチスによって主導されたベルリン大会における「動員」は、上から国民を統合する動員と、自分から積極的にファシズムに貢献するように振舞う下からのファシズムがある。それこそが、ベルリン大会を盛り上げた「歓喜力行団」を通じた「奉仕」活動である。東京大会のボランティア活動にも、同様の仕組みがある。
4-1 元アスリートからのSOS
ほとんどのアスリートが言いたいこともあると思うし、意見もあるとおもう。アスリートは協会に属し、そこで育ててもらい、皆さんの応援を受けて競技に没頭することが使命。その現場(協会)を多少なりとも触発するようなことはできない。その気持ちは汲んでもらいたい。心から願うのは・・・オリンピックが、皆さんの負の要素のきっかけに思われるようなことは・・・本望ではありません。(有森裕子さん発言)