新防衛大綱と中期防。歯止めなき防衛予算。
《社説紹介と意見》
(注1)「中期防衛力整備計画(中期防)」
(注2)「防衛計画の大綱」
「中期防」と「新大綱」の骨子と特徴を要約すれば、
・「新大綱」の特徴を一言で言えば、日米の軍事的一体化の完成と自衛隊による
打撃力の保有。
・中国の台頭に力で対抗するのであれば、防衛力は際限なく拡大せざるを得な
い。
・だが、防衛費が多少増えたところで、日本の4倍の防衛費を持つ中国に追いつ
くわけもないし、防衛力による安全には自ずと限界がある。
・政治的対立があるから抑止力が必要になる。政治の役割は、軍事に丸投げす
るのではなく、対立を緩和してゆくことだが、それを今の日本の政治は顔と姿が
見えない。
・「新大綱」は、米中の力関係の変化に伴う不確実性に言及する一方、国を挙げ
て好ましい安全保障環境の創出を目指すとしている。新冷戦とも言われる米中
の確執が明白になっているが、その安全保障環境をいかに改善するか。
・防衛力整備以前に、政治の責任と覚悟が問われている。
(注)以下の添付画像は当方が挿入。社説は、ポイントを紹介。
昨年になりますが、12/19付の『東京新聞』社説と記事は、論旨が明快でした。
「専守」の歯止め、どこへ 新防衛大綱と中期防
◆軍事的一体化を追認
(2)政府がその理由に挙げたのが周辺情勢の急速な変化と、宇宙・サイバー・電磁波という新たな領域利用の急速な拡大である。
その変化に対応するため「多次元統合防衛力」という新たな概念を設け、陸・海・空各自衛隊の統合運用を進めるとともに、宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応能力も構築、強化するという。
(3) しかし、今回の改定は特定秘密保護法に始まり、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法、新しい「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」、トランプ大統領が求める高額な米国製武器の購入拡大など、安倍政権が進める自衛隊の増強、日米の軍事的一体化を追認、既成事実化する狙いがあるのではないか。その延長線上にあるのが、戦争放棄と戦力不保持を定める憲法九条の「改正」なのだろう。
(4)さらに看過できないのは、歴代内閣が堅持してきた「専守防衛」という憲法九条の歯止めを壊しかねない動きが、随所にちりばめられていることである。ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」型の事実上の「空母」化はその一例だ。
◆ヘリ護衛艦「空母」化
(4)「いずも」型を、短距離離陸・垂直着陸が可能な戦闘機F35Bを搭載できるよう改修することが、大綱と中期防に明記された。
歴代内閣は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や長距離戦略爆撃機などと同様、「攻撃型空母」の保有は許されないとの政府見解を堅持してきた。「性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる攻撃的兵器を有することは、自衛のための必要最小限度の範囲を超える」ためである。
戦闘機を常時搭載せず、保有が禁じられた「攻撃型空母」には当たらないという論法だが、運用の具体例をみると「等」という文言が入り、拡大解釈の余地を残す。
(5) 膨張する防衛予算も専守防衛の枠を超えんばかりの勢いだ。
中期防に明記された一九~二三年度の五年間の防衛予算は総額二十七兆四千七百億円。前五年間の二十四兆六千七百億円と比べ二兆八千億円も増える。
安倍首相が政権復帰後に編成した一三年度以降、防衛予算は六年連続で増額が続いており、新たな中期防によって一九年度以降の増額も既定の方針となった。
(6) 周辺情勢の変化を理由に防衛予算を増額し続ければ、再び軍事大国化の意図ありとの誤ったメッセージを与え、周辺情勢を逆に緊張させる「安全保障のジレンマ」に陥ってしまうのではないか。
◆平和創出の努力こそ
(7) 戦争や武力紛争は、政治や外交の失敗を意味する。
大綱には防衛の目標として「平素から我が国が持てる力を総合して、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出する」ことも盛り込まれている。
日米同盟や軍事力に偏重するよりも、外交など持てる力を傾注することが平和国家・日本の役割ではないか。