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No.771(2020.6.12)「種子法」廃止と「種苗法」改正について考える

 今更ながら、「種子法」廃止と「種苗法」改正について、調べ考えてみた。

 自民党政府が、「種子法」を廃止し、国内で開発されたブランド作物の海外への持ち出しを禁じる「種苗法」の改正案が、今国会(2020年度)で断念された。

 農家が収穫物から種を取って次の作付けに利用するこれまでの農業行為に規制を加えるということで、反対の声が当然高まっていた。

 この ”改正案” は、農家が収穫物から苗木を採取し、翌年の栽培に使う「自家増殖」について、原則自由だったものを、「種苗法」の登録品種については許諾を必要とするよう改定する点に懸念と反対の声が以前からあがっていた。

 反対の声にも押され、今国会では審議入りもできなかった。

 

 従来から、『種子法』の廃止と『種苗法』の改正に対し反対運動はあった。

 一方、この2つの法律は内容の違いが一目瞭然ではないために解りづらかったと思う。そこで、まずは違いを明らかにする事で、それぞれの問題をまとめてみたい。              

 

 「このままでは、日本の農産物の多様な品種が店先から消える」  こう警鐘を鳴らすのは、元農林水産大臣山田正彦さん。山田さんは昨年から種子法廃止の動きに対して「日本の種子を守る会」を結成、廃止の影響を各地で次のように説いてきたそうだ。

 「今年4月に種子法は廃止。その結果、これまで米、大豆、麦類の品種を、各都道府県が責任を持って種子を開発・増殖してきた。それが今後は義務ではなくなる。つまり、種子を守るための予算がつかなくなる」というのだ。

 一つの品種が開発されるまでには10年、増殖には4年かかる。各地域の銘柄米を手ごろな値段で口にできたのは、膨大な歳月と労力をかけ、その予算を税金で賄ってきたから。

 さらに「日本の多様な品種を大企業の寡占から守っていかなければならない」と危機感が強まる。

 日本ではすでに「みつひかり」(三井化学)、「つくばSD」(住友化学)、「とねのめぐみ」(日本モンサント)などの籾米が流通。主に多収量の業務用米として用いられている。 「農業競争力の強化が国の方針。生産規模の小さい銘柄は集約されるので、国内の品種はいずれこういった大企業の品種に置き換わっていく。従来の品種を作り続けたいと思っても、各都道府県が生産をやめれば種子が手に入らない。やがて外国の多国籍企業の種子を一般農家は買わざるをえなくなっていく

 

一方で、「種子法」復活の動きも

 下の画像ではわからないが、種苗店やホームセンターに並ぶ野菜の種はほぼ外国産で「一代交配(F1)種」が大半。種をとってまいても前年のようには実らない。               

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 しかも、種子ビジネスを行う企業としては、莫大な開発費を回収する必要がある。そのため、「F1種」という一世代に限って作物ができる品種を販売する。自家採取できないので、農家は毎年企業から種を買わなければならない。 「種子ビジネスに乗り出してきているのは化学企業が中心。農薬と化学肥料もセットで売り、契約によって作り方も指定される。」  

 そうなると価格は企業が決めることになる。現在、民間の種子の値段は、公共の品種の種子の4~10倍。種子法によって守られてきた公共の品種がなくなれば、農産物の値段が上がることは必至

 これに対して、国会でも種子法廃止に抵抗する動きはあった。5月19日に野党6会派が提出した種子法復活法案は6月7日、衆議院農林水産委員会で審議され継続審議となった。 「『業務用の品種の作り手がいなくなるから民間を応援しよう』と政府与党は説明してきました。だからといって、各地が独自で種を作ってきた体制をなくすことはなかった」と、後藤祐一衆議院議員(国民民主党)。

 「米の民間品種のシェアは、まだ0.3%にすぎない。移行の体制も整っていないのに、大阪府奈良県和歌山県は今年度から種子の維持についての認証制度を取りやめてしまいました。弊害が明らかになる前に何とかしなければ。」  

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(さらに、次のような論説も。なるほど。)

 種苗法は現在農家が行っている自家採取を禁止し犯した場合多額の罰金を払わす仕組み。シャインマスカット等日本開発の品種を守るためと農水省は言うが、現行種苗法に「消費以外の目的で輸出禁止」条項がある。

A農林省は優良なブドウやイチゴの登録品種が、海外に持ち出されにくくするためだと主張するが、それは現行法でも阻止できる。山田元農水大臣の説明です。

 「現行の種苗法21条4項では明文で登録された品種を購入して消費以外の目的で輸出することを禁止するとしています。

 中国など多くの国がユポフ91年条約(育成者権者の権利を強化)

https://種苗法.com/foreign/91-78

を批准していないので、種苗法を改定しなくても現行の種苗法刑事告訴、民事の損害賠償もできるので、十分防ぐことはできます。

  韓国は91年条約を批准してますが、農水省知財課が2017年に文書で育種知見の海外流出を防ぐことは物理的に不可能なので、その国で育種知見の登録をすることが唯一の方法であると述べてい ます。

シャインマスカットの場合には、(独)農研機構の登録品種ですから、政府は農研機構の代理人として韓国で育種登録の手続きをすれば差止め裁判もできたはずです。

このように種苗法の改定を必要とする理由はないのて?す。

(そして、) (21条の4項)育成者権者、専用利用権者若しくは通常利用権者の行為又は第一項各号に掲げる行為により登録品種等の種苗、収穫物又は加工品が譲渡されたときは、当該登録品種の育成者権の効力は、その譲渡された種苗、収穫物又は加工品の利用には及ばない。ただし、当該登録品種等の種苗を生産する行為、*当該登録品種につき品種の育成に関する保護を認めていない国に対し種苗を輸出する行為及び当該国に対し最終消費以外の目的をもって収穫物を輸出する行為については、この限りでない*

 

 :事実関係 4月25日東京新聞社説:「種苗法改正 農業崩壊にならないか」

 ・現行の種苗法により、農産物の新しい品種を生み出した人や企業は、国に品種登録をすれば、「育成者権」が認められ、著作権同様、保護される。

ただし、農家が種取りや株分けをしながら繰り返し作物を育てる自家増殖は、「農民の権利」として例外的に容認されてきた。

それを一律禁止にするのが「改正」の趣旨である。原則容認から百八十度の大転換だ。優良なブドウやイチゴの登録品種が、海外に持ち出されにくくするためだ、と農林水産省は主張する。果たして有効な手段だろうか。

 ・米や麦などの優良品種の作出を都道府県に義務付けた主要農作物種子法は一昨年、「民間の開発意欲を阻害する」という理由で廃止。軌を一にして農業競争力強化支援法が施行され、国や都道府県の試験研究機関が保有する種苗に関する知見を、海外企業も含む民間企業へ提供するよう求めている。そこへ追い打ちをかけるのが、種苗法の改正だ。

 ・自家増殖が禁止になれば、農家は許諾料を支払うか、ゲノム編集品種を含む民間の高価な種を毎年、購入せざるを得なくなる。

死活問題だ。小農の離農は進み、田畑は荒れる。自給率のさらなる低下に拍車をかけることになるだろう。

 ・在来種だと思って育てていたものが実は登録品種だったというのも、よくあることだ。在来種を育てる農家は絶えて、農産物の多様性は失われ、消費者は選択肢を奪われる。そもそも、優良品種の流出防止なら、海外でも品種登録をした方が有効なのではないか。何のための「改正」なのか。

 東京新聞5月14日「「種苗法改正案」農家に打撃懸念 地域農業守る「在来種保全法案」を

 作物の一部を採って繰り返し育てる「自家増殖」を原則禁じ、農家に企業などから種や苗を買うよう強いる。なぜ不要不急の法案を通そうとする?

  川田龍平参院議員(立民)は十三日、インターネットを使ったオンラインの記者会見でこう訴えた。 

 その種苗法改正案では、二〇二二年から育成権者の許諾なしに、農家が自家増殖することを禁じている。

 対象は八千品種余の国の登録品種。有名どころでは、米の「ゆめぴりか」「つや姫」、イチゴの「あまおう」などがある。時間と費用をかけて開発した育成権者を守り、海外流出を防ぐ。自家増殖の禁止は国の知的財産戦略の一環だ。

 例えば、日本で登録されたブドウ「シャインマスカット」。苗木が中国や韓国に流出してしまった。自家増殖を禁じていれば国内で苗の流れを管理でき、流出を防ぐことができる。農林水産省は法案についてこんな説明をしている。

■「企業の利益保護に偏りすぎて」 一方、川田氏は「企業の利益保護に偏りすぎて地域農業を守るという視点がない」と反論する。もともと種苗の開発は国や自治体の仕事で、「種苗は公共財産」という考えが農家には強かった。

ところが、一七年に制定された「農業競争力強化支援法」は、都道府県が持つ種苗の知見を多国籍企業も含めた民間に提供するよう求めている。都道府県に優良な米や麦の生産や普及を義務付けた「主要農作物種子法」は一八年、廃止された。 

ここに自家増殖を禁止する種苗法改正が加わったらどうなるか。東京大の鈴木宣弘教授(農業経済学)は「国内品種の海外流出を防ぐという大義は理解できる。しかし、日本でも世界的流れと同様に、多国籍企業が種苗を独占していく手段として悪用される危険がある」と指摘する。

■訴訟リスク、日本の農業は衰退する。 たとえ改正されても、登録されていない品種は自家増殖できる。それでも川田氏は「登録されているのと似ている品種もある。『これは登録品種だ』と疑いをかけられ訴訟を起こされるリスクがある。これでは規模が小さい日本の農業は衰退する」と心配する。 

常に種を買わないといけなくなる。 上記の鈴木氏は「種苗法が改正されると、農家は常に種を買わないといけなくなる。種のコストが高まる。『種を持つものが世界を制す』とはいう。これでは日本の食は守れない。南米やインドでは在来種を守ろうという抵抗が農家や市民から起きている。国民が知らぬ間の法改正はあってはならない。日本の市民はもっと関心を向け、引き戻しの議論をしてほしい」と訴えた。

                                   (以上)