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No.704(2019.6.2)ドイツのエネルギー政策に学ぼう。

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         (首都ベルリン近郊に並ぶ風力発電

 

今回も、『東京新聞』記事より引用紹介 2019.5.31付 (要約)

 

原発のない国へ>

 「エネルギーシフト(転換)の世界的推進のために」

                   

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ドイツは国内の原発を二〇二二年までに全廃する方針。 一方で、既に発電量の40%(日本は17%)に達している再エネについて「今や最も重要な電源となっている」「この比率を一層高める」。エネルギー転換と国際競争力維持の両立をはかり、経済成長を目指す。

再エネの拡大には「電力網の拡充の推進」が急務。ドイツでは風力発電所の大部分が北部に集中する一方、電力の需要は工業地帯の南部で多く、両地域を結ぶ送電網の整備が「焦眉の急」。さらに今後は電気自動車の拡大などで送電網不足が生じる可能性があり、「二一年までに数百キロに及ぶ新規送電網建設に着手する」との方針。

天候によって発電量が増減する再エネが拡大すれば電力供給量の変動も大きくなる。このため変動を調整する蓄電池やスマートグリッド(次世代送電網)の重要性が「一層高まっていく」。    

ドイツは発電量に占める原発の割合を二〇一八年現在の13・3%から二二年末までにゼロにする。石炭火力も三八年末までに全廃。脱石炭に向け、炭鉱閉鎖など痛みを伴う政策にも取り組む。一方、再エネは40・4%(昨年)まで伸び、政府は三〇年までに65%に引き上げる方針。ドイツはエネルギー転換を経済成長と両立させており、風力発電の技術は今や有望産業。

これに対し日本政府は「温暖化対策には原発が不可欠」とし、石炭も使い続ける。米国などで開発中の小型原発の活用も視野に入れ、原発や石炭の復活を図る米トランプ政権と歩調を合わせる。だが原発は数万年もの保管が必要な「核のごみ」を排出し、将来世代にツケを残す。持続可能なエネルギーとはいい難い。

 それでも原発に依存し、使い続けるのか-。ドイツの呼びかけは国としてのあり方までも含めた重い「問い」を日本に突きつけている。         

緑の野原に見渡す限り巨大な風車が立ち並ぶ。首都ベルリンでは、都心から少し車を走らせただけでこんな風景が飛び込んでくる。家々の三角屋根にも太陽光パネルがあるのは当たり前。再エネはすっかり人々の暮らしの一部。

「再エネ発電所の接続を断る権限はありません」。独テネット社 テネットは自前の発電所を持たない。送電線だけを持ち、他社の発電所でつくられた電気を家庭や企業に送る「送電会社」。ドイツでは四つの同様の会社が送電網を運営する

大手電力会社が送電網も運営する日本ではなじみのない形だが、「送電網中立」のこの仕組みこそが、実は「再エネ拡大の原動力」。

日本では大手電力は自社の原発や火力発電所稼働率を高めた方がもうかるため自前の発電所の送電を優先しがち。再エネ発電所の接続要請は「電線に余裕がない」と断る例が相次ぐ。ドイツでは「大手の発電所だけが優先される事態は起こりえない」。

テネットも元は大手電力会社の送電部門だった。〇九年に欧州連合(EU)が大手による独占を排し、参入を自由化するため送電の分離を各国に義務付け。これを受け、親会社からオランダの送電会社に売却され、独テネットが生まれた。

 ドイツは〇〇年から「再エネ最優先」も法律で定めた。送電会社には再エネを原発などより優先して接続する義務が課され、電線に余裕がなければ、増強しなければならない。

 一時的に電力供給が需要を超えそうな時も再エネ発電所が出力抑制を求められるのは一番後。日本各地で大手電力により再エネが真っ先に抑制を指示され、補償もないのと対照的

再エネを増やす幾重ものルールの背景には、一九八六年の旧ソ連チェルノブイリ事故をきっかけに脱原発を決めたドイツの強い政治的な意志がある。

 市民も草の根からこれを支持する。七〇年代から続く反原発の流れも相まって、市民が再生エネ発電所に出資する例が拡大。調査会社によると再エネ発電所の出資者別では市民が31・5%と最も多く、企業や銀行を引き離す。

アグリゲーター」(まとめ役)と呼ばれる新興企業も育ってきた。二〇〇九年に創業したネクスト・クラフトベルケは、代表例。数千カ所の再エネ発電所と、電気を使う側の工場や各家庭の間に立ち、精緻な天気予報や需要予測に基づき、各発電所の出力を通信機器で細かく遠隔コントロールする。

 「再エネ発電所はお天気次第で出力が変わるため、調整役が不可欠。発電はもう大手電力の特権ではない。小さな事業者も参入できるようにしてエネルギー転換を進める。

<発電と送電の分離> ドイツでは送電会社4社のうち、テネットなど2社が元の親会社から資本関係も含め完全分離された。ほかの2社は資本関係を残す形で分社化。日本でも法改正に基づき大手電力各社が2020年度から送電部門を分社化予定。東京電力はそれに先駆け16年に分社化。だが、日本では、送電部門が同じグループ傘下に子会社として入り完全分離といえない状態が続く。

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