《紹介》
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前著『永続敗戦論』で一躍有名になった白井聡氏の新著「国体論 菊と星条旗」(2018.4)がよく売れている。
そして護憲や平和の集会で白井氏は恥げもなく講演を行っている。
ここでは紙面がないので、同書の後半の天皇を翼賛する結論部分についての批判を行いたい。
歴史の転換と「天皇の言葉」
白井氏は、明仁の「お言葉」に異様に反応し、「『お言葉』は、歴史の転換を画する言葉となりうるものである」とする。
「後醍醐天皇の倒幕の綸旨、孝明天皇の攘夷決行の命令、明治天皇の5箇条の御誓文、昭和天皇の玉音放送」の系譜に連なるものとして、それを聞けたことを、まるで楠正成や新田義貞、幕末の尊皇志士になったかのように感激する。
そして「腐朽した『戦後の国体』が国家と社会、そして国民の精神をも破綻へ導きつつある時、天皇がそれに待ったをかける行為=「天皇による天皇制批判」に出たのである」と評価し、「『象徴』による国民統合作用が繰り返し言及されたことによって」アメリカを事実上の天皇と仰ぐ国体において、日本人は霊的一体性を本当に保つことが出来るのか」「それでいいのか」と反芻する。
「お言葉」の可能性を現実に転化する民衆の力
「お言葉」にある種の霊的権威を認めていることを述べた上で、天皇の今回の決断に対する人間としての共感と敬意から、天皇の呼び掛けに応答せねばと感じたとして、白井氏は同書の最後の4 行で次のように記述する。
「お言葉」が歴史的転換を画するものでありうるということは、その可能性を持つということ、言い換えれば、潜在的にそうであるにすぎない。その潜在性・可能性を現実態に転化することができるのは、民衆の力だけである。民主主義とは、その力の発動に与えられた名前である。
天皇に依拠して民主主義という倒錯
憲法違反の「お言葉」を糾弾せずに、大時代的な感激を表明し、「『象徴』による国民の統合」「日本人の霊的一体性」を強調するこの書は、「反米右翼」の主張である。
そして「天皇制」という民主主義に反する枠組みのなかで、天皇の言葉に依拠して民主主義を闘い取るということを民衆に呼び掛けるのは、全くの倒錯の論理である。
実際には何も闘わない人のすることである。