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戦争と、貧困・抑圧・差別の構造的暴力がない社会実現のために!

No.719(2019.6.17)市民連合:高田健さんからの呼びかけ

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紹介

 (「市民連合」記事より)

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「高田です。 市民連合のサイトに書きました。 ご覧ください。」

 

安倍政権による憲法改正阻止のため、連日、街頭宣伝や署名活動を行なっている高田健さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表)に安倍政権がすすめようとしている憲法改正について5つの質問へのQ&A。

 

 Q1. 安倍首相らがすすめようとしている「改憲」に反対する理由は?

安倍首相は第1次安倍政権の誕生以来、「憲法改正」を自らの究極の政治目標にしてきました。

自民党2012年4月に「自由民主党憲法改正草案」(注1:画像挿入) 

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を党議決定しましたが、これは「天皇の元首化」、9条を変えて「国防軍を保持」する、究極の強権政治につながる「緊急事態条項の導入」などなど、歴史の流れに逆行するもので、世論の評判がよくないものでした。そこで安倍首相は2017年5月に、この改憲草案を棚上げにして、あらたな改憲をしめしました。(注2:画像挿入) 

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それは評判の悪い「9条改憲国防軍の保持」ではなく、現行憲法の第9条1項、2項をそのままにして、あらたに「9条の2」として、「自衛隊明記」の条文を付け加えるというものです。安倍首相らは「憲法自衛隊を明記しても、任務、権限は1ミリも変わらない」などと説明しています。これは真っ赤なウソです。そもそも憲法9条は「武力による威嚇または行使」を国際紛争の解決の手段としては「放棄」する立ち場に立っています。しかし、2015年9月の「安保法制」で集団的自衛権の行使が可能になった自衛隊憲法に明記することは、米国などが主導する海外での武力紛争に参加する自衛隊のことであり、戦争を容認することで、現行9条の平和主義の精神とは真逆のものになります。わたしたちは日本が「戦争する国」になることに反対です。

 

Q2.自衛隊違憲論争は終わらせるべきでしょうか ?

安倍首相は「災害救助や国防に日夜励んでいる自衛隊に関して、違憲論がある。自衛隊員のお子さんが学校から帰って、父親に『お父さんは憲法違反なの?』と聞いたという。こんなかわいそうなことを許してはならない」。「憲法に9条を明記して、憲法学者などがいう『違憲論争』を終わらせる」といいます。

たしかに自衛隊憲法9条2項が禁じている「戦力」にあたり、その発動は「武力の行使」にあたるのではないかという議論があります。憲法の平和主義を論ずるうえで、こうした議論の存在は健全なことです。自衛隊員の息子さんの話はほとんどフェイクであることが国会の論戦でも明らかになりましたが、そもそも自衛隊員個々人を「違憲」などという議論も学校教育もありません。

こうした「自衛隊、かわいそう」などという感情的なレベルの扇動で、前項で見たような「武力を行使しない国」から「武力を行使する国」への180度の転換を企てているのは容認できません。

 

Q3。その他の改憲項目と狙いはなんですか?

いま、自民党が提示している改憲案(条文イメージ、たたき台案)にはこの9条改憲のほかに3つあります。

「教育の充実」「緊急事態条項」「合区解消と地方自治です。

結論からいうと、この3つはそもそも憲法改正に値するマターではありません。世論が警戒する9条問題が突出するのをおそれて、あるいは、公明党や維新の会を改憲派に巻き込みたくて、これらを強引に改憲項目に付け加えたのではないでしょうか。「高等教育の無償化」などといいますが、日本国憲法は教育を受ける権利を保障しています。憲法は義務教育の無償化を謳っていますが、高等教育の無償化を禁じてなどいません。政治が実行する気さえあれば、憲法を変えずとも実現できるものです。

緊急事態条項の導入論は、当初、「大地震、その他の災害発生時に、国会が解散していたらどうなるか、国会議員の任期延長が必要だ」という議論でした。ところが自民党内の議論の経過の中で、災害発生時の「緊急政令」などの条項も新たに付加されてきました。緊急時には国会が決める「法律」に匹敵する「政令」を内閣が決定できるというものです。しかし、災害対応は「災害対策基本法」があります国会議員の任期延長は参議院が3年に一度の半数改選であることや、公選法の「繰り延べ投票」などを適用すれば、国会が機能しない事態は考えられませんこれは改憲事項でないことはあきらかです。そればかりか、「緊急政令」はかつてのナチス・ドイツの「授権法」を想起させる権力の乱用、独裁の危険があります。

 

Q4。改憲手続き法にはどんな問題がありますか?

いま、衆議院憲法審査会では憲法改正手続法(国民投票法)」の改定の議論があります。自民党などは同法を、投票の利便性(投票所設置の緩和)などの改定をした公選法の改正にならべて改憲手続法を修正する案を出しています。改憲手続法は2007年に制定されたものですが、制定当初から多くの問題点が指摘されていました。国民投票法改憲発議のあと、改憲の是非を問う国民投票を実施する法律ですが、この法律が民意を公平・公正に反映できるものであるかどうかは、憲法の死活にかかわる問題です。2007年に採択された同法は問題が多く、3つの附則と18項目の付帯決議が付いた、いわば欠陥法でした。日本弁護士連合会なども会長声明などで同法の問題点をしばしば指摘しています。このところ、国会では公選法並びの改正案が自公から提起されたことを契機に、改憲手続法の問題点が議論され、とりわけ野党からは投票結果に重大な影響を与える有料テレビコマーシャルの取り扱いが、資金力のある改憲派に極度に有利な仕組みになっていることが指摘されました。この問題では憲法審査会で民間放送連盟の幹部なども参考人聴取されましたが、民放連は自主規制を拒否しました。野党は「自主規制」を前提に作られた法律なのに、前提がくずれれば出直ししかないと、公選法並びに限った改定に反対しています。問題は、このほかにも、国民投票運動期間が短すぎることや、国民投票最低投票率規定がないこと、公務員・教育者の国民投票運動に規制が強すぎることなど、抜本的な再検討を要する項目がすくなくありません。自民党などは一刻も早く、憲法改正案の議論に入りたいため、強行採決をちらつかせ、与野党の対立が激化しています。

 

Q5。憲法を守るって?

人は生まれながらにして天からあたえられた権利、自由を持っています。しかし、国家権力はときに暴走し、こうした権利を踏みにじったり、うばったりすることがあります。憲法とは権力制限規範です。

私たちは時の権力者による憲法改悪に反対し、立憲主義を擁護する立場にたっています。

改憲反対というと、「反対」「守る」という主張が強く突出してみられがちですが、立憲主義と合わせて考えると、きわめてポジティブな考え方になります。日本国憲法の3原則といわれる「平和主義」「民主主義」「基本的人権の尊重」を社会のすみずみにまで生かし、実現する政治を求めるものです。これに「前文」や「9条」の国際主義を加えれば、こうした憲法が求める社会の実現が、この社会を平和で、自由で、平等な、明るく、豊かに、大きく変えていくことにつながります。安倍首相らの改憲に反対する運動は、決して後ろ向きな運動ではなく、そうしたポジティブな運動です

                               (以上・高田健)

No.718(2019.6.16)悪法は必ず「改正」され、国民の権利を蹂躙する

紹介

”ゆでガエル”の法則

下記の記述は、この傾向・法則に合致することを証明しています。

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(『東京新聞』2019.6.14夕刊記事より)

論評:「改正」で力を増す悪法~権利制限の一途」の記事より要約します。

(注:画像は記事とは関係なく、挿入しました)

著者:池内了(さとる)氏 (総合研究大学院大 名誉教授)

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・悪名高い治安維持法は、第二次世界大戦が終わるまで、度重なる「改正」と拡大解釈によって取り締まる対象がどんどん拡大され、罰則も厳しくなって国民は物言えぬ状況に追い込まれた。

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国民の権利を制限し侵害する可能性がある悪法は、いったん成立してしまうと、権力はさまざまな理屈をつけて「改正」し、国民を支配する範囲を拡大するのが常である

(権力者の都合)

・第二次安倍内閣になって以降、「特定秘密保護法」、「安全保障関連法」、「組織的犯罪処罰法(いわゆる共謀罪法)」などさまざまな法が作られたり改正されたりし、最近では“働き方改革”と称して、「労働基準法 や 労働安全衛生法」が(改正)され、「高度プロフェッショナル制度」が新設された。

最初は露骨な悪法化は控えられるのだが、人々がその法になれて抵抗しづらくなると、権力にとって都合がよいように“改正”の動きが出てくる

(更に具体的には、事例で)

≪盗聴しやすく≫

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オウム事件を契機に1999年に成立した「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(いわゆる盗聴法)」。通信の秘密や自由を侵害する危険性があることから、最初は四つの犯罪類型に限られ、裁判官の傍受令状と通信事業管理者の立ち合いが義務化されていたものが、相次ぐ(改正)で窃盗や詐欺など更に九つの犯罪も傍受可能と範囲が拡大し、事業者の立ち合いも不必要となり事業者の施設で行っていた傍受を専用機器を備えた各警察本部で自由に行えるようにした。

・どんどん警察の独断による盗聴が可能となり、秘密のうちに思想や行動調査のための監視を行なえるように変えた。

 

・もう一つの事例は、ドローン規制法の「改正」。今年6月に施行の今回の「改正」では、防衛関連施設として自衛隊・米軍施設を加え、さらに上空だけではなく周囲三百メートルの区域の上空までもが原則禁止に変更された。

 

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・この影響は即座に、沖縄で現れる。辺野古現場は米軍キャンプ・シュワブと提供水域に囲まれているためドローンが飛ばせず、工事の進捗状況も撮影できなくなるだろう。

≪基地の監視は≫

基地周辺までが“治外法権”になってしまう。やはり戦前に基地がみえる丘で写生していただけなのにスパイと決めつけられて罰せられた事例。

はじめはあまり影響がないと思っていても、悪法は必ず「改正」され、国民の権利が蹂躙されていく道をたどる。

・国民の権利を制限する可能性のある悪法は、最初から一切拒否する姿勢を貫かなければならない。

 

 

No.717(2019.6.15)NHK放映ビデオ:隠された日本兵のトラウマ

 

 《紹介》 

下記のテレビ放映、見逃された方に

BS1スペシャル 隠された日本兵のトラウマ

陸軍病院8002人の”病床日誌“~ 

私はこの番組で、強烈な原体験に似た感覚にとらわれました。

 

少し長くて約1時間。

 (前編)

 

www.dailymotion.com/video/x6xtucu

 (後編)

www.dailymotion.com/video/x6ylvj3

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 日中戦争から太平洋戦争の時代、精神障害兵士が送られた国府陸軍病院 

 密かに保管された8002人の「病床日誌(カルテ)」が研究者によって分析され、日本

 兵の戦時トラウマの全貌が明らかになった。 

 戦場の衝撃に加え、精神主義による制裁や住民への加害の罪悪感が発病につながって

 いたことが判明した。 

 番組では発病地の多い中国での治安戦の実態を取材。戦後も社会復帰を阻まれた兵士

 と、その家族の姿をカルテをもとに追跡する。浮かび上がってきたのは、戦争が終

 わっても続く「暴力の連鎖」だった。

 

 

 

No.716(2019.6.14)原発なくす蔵 のウェブサイト紹介

紹介 ブログ:原発なくす蔵(ぞう)』

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 ブログ : 『原発なくす蔵(ぞう)』 を紹介します。

        ウェブサイトはこちらから

             

        http://npg.boo.jp/   

  

  このブログは、原発関連の情報・問題。課題が網羅された、いわば(原発

   エンサイクロペデイア:Wikipedia)と呼んでもいいくらいの充実した情報サ

 イトだと思います。

  コンテンツ、分野は一言では言い尽くせないほど豊富すぎます。

  しかもまとまりがいい。

  まずはこのサイトをご覧になり、お気に入りに保存されることをお勧めします。

  原発関連のすべてがわかるといっても過言ではないでしょう。

  私も折々にこのサイトから有用情報を得ていま。  

 (このサイトのいいところ)

  とにかく、網羅的で、しかもよくまとめられていて、情報が得やすい。

 (例えば、上の画像のトップページの、(資料)というところをクリックすると、

  一目瞭然。)

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(設立趣旨文 抜粋)  

山が動く日きた来る」、1911年雑誌『青鞜』創刊号に詩人の与謝野晶子が寄せた文の出だしの言葉です。・・・ 

  原発安全神話のもとで生活してきた私たちには、2011年3月11日以降の状況は、まさに「山が動く日きた来る」と、同じ思いを抱かせるものでありました。・・・ 

 市民運動は、全国各地で根気よく継続されています。3.11以前とは確実に異なる形で、「原発をなくす」ための行動は展開されています。訴訟・裁判、抗議活動、講演会・集会、テントの設営、NPO法人の設立、映画・ドキュメンタリーの制作、そして政治活動など多様性に富んでいます。 

  今回、このホームページで集めたのは、そうした日本全国、各地の様々な市民の活動・運動のホームページやFacebookです。 

原発をなくす」、同じ思いで運動に関わりながら、現在の市民運動は「バラバラに活動している」、「テーマが細分化している」、「情報過多でわかりづらい」、「首都圏中心の情報に偏りがちである」などの問題点を抱えているように思われます。そんな市民運動が、再び「原発安全神話」をつくろうとしている強力な勢力に対抗していくためには、ネットワークの形成が不可欠でしょう。私たち【原発なくすぞう蔵】は、その一助になることを願って、ここ九州の地より産声をあげ、全国に発信を致します。

 

   取りあげたリンク先は、現状把握できたものを掲載しています。「掲載されていないぞ、載せてほしい」大歓迎です。どんどん御投稿・御紹介ください。一方で、すでに活動していない団体のものも含まれるかもしれません。そのときは、ご容赦ください。また、御意見・御批判や投稿文などありましたら、お寄せください。お待ちしております。「山を動かし続けるために」

 

 

 

No.715(2019.6.13) 市民放射能測定データサイト(紹介)

《紹介》

  東電第一原発による放射能汚染の状況を地道に調べてきた市民グループ

 みんなのデータサイトを紹介します。

  

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  がコンセプトだそうです。

★ グループのウェブサイト:HPは、https://minnanods.net/soil/

  TWは https://twitter.com/minnanodatasite?lang=ja

  FBは https://www.facebook.com/minnanodatasite/

 

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 ・ また、昨年11月に発行した本 「図説17都県 放射能測定マップ+読み書き集」という自費出版が順調に増刷できて、大手の書店でも扱えるようになりつつあるそうです。(Amazon でもOK)

             

No.714(2019.6.12) ゆで上げられるカエルのたとえ

                  

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 新たな防衛力整備の指針、いわゆる「新防衛大綱」が閣議決定されたのは昨年末。  

 (注:防衛省 ウェブサイトを参照

https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2019/index.html

 ヘリ搭載型護衛艦の事実上の空母化、敵基地攻撃能力とみなされかねない長距離巡航ミサイルの配備などが盛り込まれた。改修した護衛艦には最新鋭ステルス機の搭載が想定されている。  

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◆戦争に近づく 

 政府は艦船には「戦闘機は常時搭載しない」から空母ではないといい、長距離巡航ミサイルもあくまで防衛のためだという。しかし、いずれも使い方によっては簡単に「攻撃型」に転じ得る。長く守ってきたわが国の原則、「専守防衛」が骨抜きにされていく。 

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 安倍政権は「専守防衛は逸脱しない。心配ない」と言いつつ、この国をまた少し、じわっと戦争に近づけてゆく。そして、思い起こせば、第二次安倍政権になってから、この「じわっ」が続いている。 

 ・きなくさい情報が隠されてしまう特定秘密保護法でじわっ。

 ・過去の政権が「保持しているが行使できない」としてきた「集団的自衛権」を閣議決定で「行使容認」し、じわっ。

 ・同盟国の戦争に加われるようにした安保関連法でじわっ。

 ・反戦運動など市民の自由な行動を縛りかねない「共謀罪」法でじわっ。

 ・そして、空母化や長距離巡航ミサイルで、また…。

 

 そのつど「平和主義は堅持する。心配ない」と政権は言いながら、その実、原則を次々に変質させ、日本はじわじわじわじわと戦争へ近づいている。 

 安倍晋三首相が念願とする九条に自衛隊を明記する改憲は、そのとりあえずの仕上げ以外の何物でもない。 

 もし、政権が「平和主義も専守防衛の看板も下ろし、憲法九条を変え、戦争用の法整備もし、敵基地攻撃可能な軍備を強化して、いつでも戦争をできる国にします」と言ったら、どうなのか。

 個々のことは「政権が『心配ない』と言うのだから」と許容した人も考えを変えるかもしれない。 

 いっぺんに大胆にことを進めるのではなく、漸進。

 まるで、歩哨の目を恐れる兵士の匍匐(ほふく)前進みたいに、じわじわ少しずつ…。 

◆温暖化も人口減も 

 この「じわじわ」というのは本当に曲者(くせもの)。 

 例えば地球温暖化。温暖化防止の国際ルール・パリ協定の締約国会議で協定実施の指針が決決まったが、世界が一枚岩で切迫感をもってこの問題に取り組む体制になったとは言い難い。 

 もし、いっぺんに五度も十度も平均気温が上がれば、さすがに「温暖化はでっち上げ」などという妄言も消えうせまるだろう。しかし、温暖化もじわじわ少しずつ進む。   

 ゆえに、真の脅威と実感しにくい面がある。 

 わが国の人口減にも同じことが言える。今から50年足らず後、2065年には現在より4千万人も減って8千万人台になると、ほかならぬ国が推計しているのに、まだ、政治は成長主義一辺倒。成長の限界の先を豊かに生き抜いていける道を、保・革どの政党もビジョンを示せないでいる。じわじわ少しずつ減っていくからだろうか。 

 私たちには最悪のことはわが身には起こらないと考え、好ましくない兆候を過小評価する心の傾き、いわゆる「正常性バイアス」があるそうだ。 

 また、問題の当事者が多いほど、自分でなくても誰かがやるだろうと高をくくって行動しない、いわゆる「傍観者効果」も働くと、心理学分析している。 

 どちらも「じわじわ」の眩惑(げんわく)力を助長しかねないことを心に留め置かないといけない。 

◆ゆで上げられないよう      

     

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 カエルの話。 

 熱い湯にカエルを入れたら、すぐに飛び出すが、水に入れてじわじわ温度を上げていくと、そのままゆで上がってしまう。 

 よくない方にじわじわ進むこともあるはず。“温度変化”に敏感でいたいものだ

 

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No.713(2019.6.11)桐生悠々 氏 のこと

 
≪紹介≫  
桐生悠々(きりゅう・ゆうゆう)氏。 
 
1873(明治6)年、金沢生まれ。明治から戦前にかけ、軍部と権力者を痛烈に批判し続けた反骨の新聞記者。東京帝国大卒。中日新聞社(現東京新聞社との系列)の前身の一つである新愛知新聞や、長野県の信濃毎日新聞主筆を務めるなど、複数の新聞社で活躍。
信濃毎日時代、社説「関東防空大演習を嗤(わら)ふ」を書き、木造家屋の多い東京上空で敵機を迎え撃つ想定の陸軍演習の無意味さを批判。軍部の怒りを買い、退社に追い込まれた。晩年は愛知県で個人誌「他山の石」を刊行。
下記の、「言いたい事と言わねばならない事と」はここに掲載された。41(昭和16)年に68歳で死去。
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                       『言いたい事と、言わねばならない事と』
                                       ・・・・・桐生悠々・・・・
  
 人動(やや)もすれば、私を以て、言いたいことを言うから、結局、幸福だとする。だが、私は、この場合、言いたい事と、言わねばならない事とを区別しなければならないと思う。
  
 私は言いたいことを言っているのではない。徒(いたずら)に言いたいことを言って、快を貪(むさぼ)っているのではない。言わねばならないことを、国民として、特に、この非常時に際して、しかも国家の将来に対して、真正なる愛国者の一人として、同時に人類として言わねばならないことを言っているのだ。 
 
 言いたいことを、出放題に言っていれば、愉快に相違ない。だが、言わねばならないことを言うのは、愉快ではなくて、苦痛である。何ぜなら、言いたいことを言うのは、権利の行使であるに反して、言わねばならないことを言うのは、義務の履行だからである。尤(もっと)も義務を履行したという自意識は愉快であるに相違ないが、この愉快は消極的の愉快であって、普通の愉快さではない。 
 
 しかも、この義務の履行は、多くの場合、犠牲を伴う。少くとも、損害を招く。現に私は防空演習について言わねばならないことを言って、軍部のために、私の生活権を奪われた。私はまた、往年新愛知新聞に拠(よ)って、いうところの檜山事件(注1)に関して、言わねばならないことを言ったために、司法当局から幾度となく起訴されて、体刑をまで論告された。これは決して愉快ではなくて、苦痛だ。少くとも不快だった。 
 
(注1)檜山事件 
名古屋市の女学校の校長が校内での不倫を隠すため、事実を知った女性教師らを解雇しようとした事件 
 
 私が防空演習について、言わねばならないことを言ったという証拠は、海軍軍人が、これを裏書している。海軍軍人は、その当時に於(おい)てすら、地方の講演会、現に長野県の或(ある)地方の講演会に於て私と同様の意見を発表している。何ぜなら、陸軍の防空演習は、海軍の飛行機を無視しているからだ。敵の飛行機をして帝都の上空に出現せしむるのは、海軍の飛行機が無力なることを示唆するものだからである。 
 
 防空演習を非議したために、私が軍部から生活権を奪われたのは、単に、この非議ばかりが原因ではなかったろう。私は信濃毎日に於て、度々軍人を恐れざる政治家出でよと言い、また、五・一五事件及び大阪のゴーストップ事件(注2)に関しても、立憲治下の国民として言わねばならないことを言ったために、重ねがさね彼等(かれら)の怒を買ったためであろう。安全第一主義で暮らす現代人には、余計なことではあるけれども、立憲治下の国民としては、私の言ったことは、言いたいことではなくて、言わねばならないことであった。そして、これがために、私は終(つい)に、私の生活権を奪われたのであった。決して愉快なこと、幸福なことではない。 
 
阪市で信号無視をした陸軍兵を警察官が注意し、けんかとなり、その後、陸軍が警察に抗議し、軍部と内務省の対立に発展した事件 
 
 私は二・二六事件の如(ごと)き不祥事件を見ざらんとするため、予(あらかじ)め軍部に対して、また政府当局に対して国民として言わねばならないことを言って来た。私は、これがために大損害を被った。だが、結局二・二六事件を見るに至って、今や寺内陸相によって厳格なる粛軍が保障さるるに至ったのは、不幸中の幸福であった。と同時に、この私が、はかないながらも、淡いながらも、ここに消極的の愉快を感じ得るに至ったのも、私自身の一幸福である。私は決して言いたいことを言っているのではなくて、言わねばならない事を言っていたのだ。また言っているのである。 
 
 最後に、二・二六事件以来、国民の気分、少くとも議会の空気は、その反動として如何(いか)にも明朗になって来た。そして議員も今や安んじてなお戒厳令下にありながらその言わねばならないことを言い得るようになった。斎藤隆夫氏の質問演説(注3はその言わねばならないことを言った好適例である。だが、貴族院に於(お)ける津村氏の質問に至っては言わねばならないことの範囲を越えて、言いたいことを言ったこととなっている。相沢中佐が人を殺して任地に赴任するのを怪しからぬというまでは、言わねばならないことであるけれども、下士兵卒は忠誠だが、将校は忠誠でないというに至っては、言いたいことを言ったこととなる。
  
(注3)斎藤隆夫氏の質問演説 いわゆる「粛軍演説」。軍部に綱紀粛正(粛軍)を求めると同時に、議会を軽視し、政治への介入を強める軍部を批判した
  
   言いたい事と、言わねばならない事とは厳に区別すべきである。