《批判》
教科書検定で、自民党政権の(領土問題)での自己矛盾が広がっている。
(『東京新聞』2019.3.27付記事を参考に)
文科省は3/26、2020年度からの小学校教科書の検定結果を公表した。
(5,6年生で英語が正式な教科となり、初めての教科書ができる。)
このことは別途批判したい。
今回は、社会科について。
2020年度から使用される小学校五、六年生用「社会」のすべての教科書に、北方領土、尖閣諸島、竹島について日本の「固有の領土」と明記された。
これは、2017年告示の新学習指導要領に沿ったもの。
一方で安倍政権は、北方領土については、ロシアとの交渉に行き詰まり、昨年以降、「固有」という表現を微妙に避けている。
ここに、安倍政権自らがもたらす自己矛盾が現れている。
・新指導要領には、中韓両国と争う尖閣諸島、竹島と併せて北方領土についても小学校では初めて「わが国固有の領土であることに触れること」という明記された。それに従い、現行教科書でも多くの出版社が自主的に「固有の領土」という表現しているが要領改訂で法的拘束力が生まれ、記述が義務になった。
・ところが現実の国会や記者会見では、北方領土の交渉が難航し、浮つく中で「固有」の表現を微妙に出さなくなっているのだ。
・国会答弁で、北方領土を「固有の領土か」と姿勢をただされる質問に対し、政府は、「ロシア政府との今後の交渉に支障を来す恐れがあることから、答えを差し控えたい」と及び腰に転じている。この答弁は閣議決定に基づいている。
・そこで、上記の教科書検定表記との整合性が付かなくなった。
・そもそも、領土問題の教科書記述を共用してきたのは安倍政権であり、第一次政権時の2006年に、最悪の教科書基本法改定で、「愛国心」を目標に盛り込んだのが始まり。
・第二次政権の2014年、学習指導要領を補う「解説」を中高で改訂し、三つの領土問題の明記を定めた。同時に、教科書検定基準も変え、通説のない近現代史を扱う際は「政府の統一見解に基づいた記述」を強要し始めた。
・北方領土は、1989年から中学のみ指導要領に「固有」と記載されたが、尖閣諸島と竹島を巡る安倍政権の強硬路線に引っ張られる形で、小学校~高校に一気に義務化が進んだ。
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・教科書表記は不変ではないが、研究や発掘に基づいた客観性が命である。
時の政権の対外政策上の都合や考えで基準を自在に変えることはあってはならないというのが鉄則ではないか。
・領土問題で、自国の時々の政治的立場で子どもに他国への敵対心や排外心を植え付けることは最悪の教育だ。
・安倍政権の進める、米国との位置関係を最重点に設定し、それを教育に持ち込むことは決して許してはならない。それは過去の戦争への道筋をそのままたどることにつながるからだ。