湘南Theoの平和のページ・ブログ

戦争と、貧困・抑圧・差別の構造的暴力がない社会実現のために!

No.764(2020.4.28)コロナ禍:危機の今こそ歴史をひもとき、道標を探すことの大切さ

東京新聞』4/27記事(こちら特報部と、ネット:「日刊リベタ」記事を参考に。 (画像は、記事とは無関係に、当方が挿入しました。)

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新型コロナウイルスの危機に直面する人たちに向けて、京都大学人文科学研究所 准教授 藤原辰史さんがインターネット上で発表した文章「パンデミックを生きる指針--歴史研究のアプローチ」が示唆に富んでいる。戦争、飢饉、恐慌・・・「・・・理性を保つのは難しい。自分と大切な人たちがどう生きていくか・・・」

 ・この「指針」論文は、4/2、岩波新書編集部が運営するHP:「B面の岩波新書に掲載された。

(サイトは ➡ https://www.iwanamishinsho80.com/post/pandemic )

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※ 以下、ポイントを抜粋列記してみます。

・今起きていることは、いずれ世界史の教科書に載るような大転換だ。

 危機のたび、為政者は安易な希望論や精神論を打ち出してきた。一方で、人々は思考の限界に突き当たり、感情に目を曇らされ、理性を保つのが難しくなる。

・ 現金給付の政策を巡り二転三転する国の姿は、「ものすごく勘どころをつかみ損ねている。誰のために政治をしているのかという思想がない」。

・その象徴が「ステイホーム」の要請。首相が犬を抱き、外出自粛を呼び掛ける動画。

友達と会えない、飲み会に行けない、が本質ではない。医療従事者、インフラを維持する人、食料を造り、運び、売る人・・・。自分の頭で物を考える政治家ならば、いまステイホームできない人のことを考える

 あの動画から伝わるのは、『王は家にいる。汝ら励め』。ステイホームが持つ構造を把握する力がないから、国民に声が届かない。トップがぐらつく政権に、この緊急事態を委ねる危機感は強い

・農業や食の思想、環境の歴史、戦争や災害にまつわる出来事に関しても、

 「危機の時代には、人間の本性が現れるから。暗い歴史の中だと、誠実な人たちの言動が光り輝いて見えやすい。過去の感染症でも献身的な医療従事者がいて、多大な犠牲も払ってきた。」 「100年前の「スパニッシュ・インフルエンザ」いわゆるスペイン風邪が歴史の参照軸。1918~20年に流行し、世界の死者は4千万人とも推定される。スペイン風邪の流行は三回の波があり、二回目で致死率が高まった。疑心暗疑から生まれる感情は人間の理性を曇らせる。米国では当時、反ドイツ感情の高まりから、ドイツの製薬会社の薬に病原菌が混ぜられているとうわさされた。」

 今も欧米でのアジア人差別や、ウイルスの発生源を巡る疑念が広まっている。「あの家から感染者が出た、とうわさが出たとき、ある種の感情が生まれる。品性の喪失の先にある憎悪は、人への攻撃、国同士の対立にもつながってきた。」

 「エスニック・クレンジング(民族浄化)という言葉もある。差別的なプロパガンダを支えるのは一人一人の感情。日本でも関東大震災で『朝鮮人が井戸に毒を入れた』というデマが流れ、虐殺が起きた。ウイルスよりも怖いのは人間。遠い国の話ではない。」

 「日本陸軍の半分は、補給がないために飢えて死んだ。今も過労による自殺が起きている。勝利至上主義、パワハラの横行で、日常をおろそかにする文化は、日本に根強くある。」

 コロナ以前から、日常の危機にさらされてきた人びとへの対策も必要だ。たとえば、基地周辺の住民、原発事故の避難者、子どもを抱えて働くひとり親。「パンデミック(世界的大流行)は純粋な災害ではなく、複合災害。もともと弱い立場にあった人たちをさらに苦しめる構造がある」ためだ。

パンデミックはいずれ収束する。「その時、為政者によって、コロナに打ち勝った、という勝利と復興の物語に切り替わるだろう。」 解放感のあまり、人々は恐怖も生命のリスクにさらされていたことも忘れ、大イベントへ突入していく。

「みんな歴史を忘れてしまうけれど、これはとても罪なこと。私たちはもう知ってしまったから。決してコロナ前には戻れない。」

国民の声に耳を貸さない政権の脆弱さを見てしまったし、子どもや派遣労働者、弱い立場の人たちに負担をしわ寄せし、防護服もマスクも税金で手当てできないまま働く医療従事者に、命を救われたことも知ってしまった。

「コロナの犠牲の上に認識できた問題を、決して忘れてはならない。合理化の下に人間を切り捨てることのない、新たな社会の構築に力を尽くすことは、生き残った人たちの責務だと思います。」

 

 ※ 以上の論説概要は、いま、コロナとの闘いに苦しんでいる私たちには、まだまだ先の課題のようにも思えそうだけれど、その渦中の今、真正面から考えないと、とんでもないしっぺ返しが待ち受けているように思えます。

 

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                                  (以上)