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No.763(2020.4.27)新型肺炎(コロナウイルス)に関する論評紹介

 新型肺炎(コロナ・ウイルス)に関する分析論評

 

コロナウイルス:新型肺炎 に関する、『週刊金曜日』(No.1276 2020/4/10)記事より、”ウイルスの起源” についての、詳細で分析的な論評を、記事の抜粋要約で紹介したい。

(注)矢吹晋 横浜市立大学名誉教授、21世紀中国総研デイレクター の論評

 

 ただし、専門的で結構難解な分析で、理解するのもたやすくはない

また、以下の論説を鵜呑みにすることも危険なことではあるとも思う。

 

  新型コロナウイルスはどこから来たのか

 “起源を探る研究を見れば、陰謀論は否定できる”

<世界中で新型コロナウイルスに関する研究が行われ、徐々にウイルスの起源が明らかになっている。これらの研究からは、世界各地でささやかれる「陰謀論」はデマであることが明白だ。>

 

・日本ウイルス学会は2月10日、新型コロナウイルス:2019-nCoVの特徴を「SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスと80%同じであり、同じ受容体を使ってヒトの細胞に吸着・侵入する。ゆえにSARSで得られた知識を応用することで、研究を迅速に行うことができる」と解説した。

 コウモリ起源を裏付ける、石正麗(シージョンリー)の研究

中国科学院武漢ウイルス研究所は、2020年1月2日にコロナウイルス2019-nCoVのゲノム配列を確定した。また1月11日には、WHO(世界保健機関)の世界流感データベースにゲノム情報を届け、1月23日には、同研究所の石正麗チームがbioRXivのホームページに「2019-nCoVの発見、およびコウモリ起源の可能性」と題した論文を発表した。

石正麗チームの論文では、2019-nCoVのゲノムを初めて特定するとともに、コウモリ宿主のウイルスのゲノム配列と96%まで一致することを確認したこの特定が可能になったのは、実は同じ石正麗チームによって、先行研究が2017年に発表されていたためだ

・それによると、SARSウイルスをもつキクガシラコウモリのウイルスが2005年以来中国各地で発見された。コウモリ・ウイルスSARSr-CoVsは、SARSウイルスSARS-CoVとは異なるゲノムを持ち、直接的先祖ではないと考えられてきた。そうした中で、石正麗チームは、雲南省の洞窟に棲むキクガシラコウモリのコウモリウイルスを5年間観察した。そして2017年に前述の研究成果を発表し、2019年には武漢市で発生した2019-nCoVのゲノムが「SARSのそれと酷似している」ことを突き詰めた。

しかしながら、真向からこれを批判する論説が現れ、惑わされた人も少なくない。「新型コロナウイルスは生物化学兵器だ」という、いわゆる「陰謀論」の数々がSNSを通じて世界に拡散し、インフオデミック(情報の世界的拡散)をもたらした

生物兵器説を厳しく斥けたのは、医学専門誌『ランセット』(2020.2.18付)での感染症専門家による声明である。「このウイルスはコウモリ起源の自然変異による」との見解に立つ。それゆえ新型ウイルスは「遺伝子組み換えで加工されたもの」とする前提を誤りだと否定する

 

ウイルスの系統を示唆する郁文彬(ユイウエンビン)の研究

 

 

 

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(1)

ゲノム解析から伝染経路と拡散のルートを追求する試みは、世界各国の研究者によって行われているが、中国科学院シーサンパンナ熱帯植物園のゲノム研究者・郁文彬(ユイウエンビン)チームの研究。彼らは93サンプルに含まれた58種のゲノムを解析し、その結果を5類に分類した。

A:雲南型  

B:米国型  

C:中国湖北  

D:中国浙江  

E:米・広東型   の5類。

(2)

・A型には古株の H1、H3、H13、新型H56,mv2が含まれる。

武漢(華南海鮮市場)の新型コ

ロナウイルスは、他地域から伝染

して市場内でまん延し、

市場外に出た。

・120の変異点に着目以すると、58種のゲノム類型が得られ、変化の過程を知ることができる。

H13とH38は比較的古い型である。中間キャリア(mv1、同じ祖先か中間宿主)とコウモリ・コロナウイルスとが作用してH3からH1が派生した。

(3)

・海鮮市場とかかわる患者は、いずれもH1、あるいはそこから派生したH2、H8~H12である。武漢サンプルH3は海鮮市場とかかわりがなく、他地域から伝染した。発病時期と拡散時間から推断すると、海鮮市場はウイルスの発生地ではない。古株のH13は深圳の患者(広東1号)から、H38は米国ワシントン州の患者(米国1号)から、2019年末から2020年1月初め、武漢の家族を訪ねて感染した。現有の武漢サンプルには、H13とH38はない。

上の図は、ゲノム解析に基づき、郁チームがウイルス株の系統樹(ファミリー関係)を描いたもの。

・グループA(雲南)とB(米国)は第一世代。C(湖北)はAB第一世代の子=第2世代。D(浙江)、E(米・広東)は第3世代としてCから生まれ、第1世代A、Bの孫に当たる。

・中国で採取されたウイルスはすべてC家族である。(CDE)

・米国で採取されたウイルスはABCD全てを含む。

この系統樹から何を読み取ることができるのか?

・郁文彬チームは必ずしも踏み込んでいないが、この図から大胆に、「米国で採取されたウイルスはABCDすべてを含む」ゆえに、新型コロナウイルスの母体であり、「中国で採取されたウイルスはすべ

てC家族である(CDE)」ことからして、発生源は米国とする解釈が一部で行われている。

・その科学的論証は今後に待つしかあるまい。

  

新型コロナウイルスは、L型とS型に大別できる

・郁文彬チームより少し遅れて、2020年3月3日、(北京大学生命科学学院バイオ情報センター蛋白質植物ゲノム研究国家重点実験室)は、ゲノム配列のヌクレオチド8517番目と27641番目に着目してウイルス株を二大別し、L型S型と名付けた。

・これによると、103個の新型コロナウイルスゲノム解析において、149個の「突然変異」を観察し、新型コロナウイルスL亜型およびS亜型に分けたところ、前者が70%、後者が30%であった。

S型はかつてのSARSに似ているのに対して、L型は感染力がはるかに強烈だという。武漢やイタリアでアウトブレイクしたのは、このL型の感染力の強さを示していると見てよい

 

・一方、日本国内からも、生物データの解析を行なっている日本バイオデータ社(神奈川県川崎市)が、「新型コロナウイルスは三つのヌクレオチドの塩基の並びから、CTC、TCC、TCTの3グループに分けられ、武漢で見つかったウイルスのほとんどがCTCグループに属し、他のグループに分類されたのは全21例中の1例に限られる。これらから、武漢で広がっているウイルスと他のエリアで確認されているウイルスは、異なる性質を持っていることも考えられる。(東京で見つかったのはTCTグループ<東京型>)。したがって、今後CTCグループが広がる、武漢同様の被害が出る恐れもある。CTCグループと他のグループは、現在のqPCR法による検査では見分けるのが難しい」と分析する。

・同社がこの分析を発表したのは2月中旬である。その一カ月後ヨーロッパではL型が猛威を振るい、今日に至る。

・米空母セオドア ルーズベルトでも、多数の乗組員が感染した。同空母は1月14日にフロリダを出港、その時すでにサイレントキャリアを乗せ、2か月後に発症した可能性が強い。

この事件は、米国の感染状況の真相を探る有力な材料になるに違いない。   (論評紹介 終わり)

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以上から、安易に陰謀論に乗っては危険であり、疫学的論証を根拠とする学術評価を待つべきだ。

 

 (追記)【新型コロナウイルス 基本情報】AFP (BB NEWS)

 

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