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No.759(2020.3.13)南西諸島の危険な軍備強化の実態(その1)

《現状認識》

「武器輸出反対ネットワーク」(NAJAT) ほかの皆さんが先頭に立って、全国各地での軍拡に抗する活動を展開されています。

2019/7に開催された、「宇宙に広がる南西諸島の軍備強化~大軍拡と軍事基地にNO! アクション2019」での講演記録をまとめて、パンフレットを作られました。それをベースに、要約をしてみました。

(NAJAT)は、下記で検索できます。

(ブログ)https://najat2016.wordpress.com/

または、武器取引反対ネットワーク(NAJAT) で検索

下図は、軍事評論家の小西誠さんが書かれた本:『オキナワ島嶼戦争 自衛隊海峡封鎖作戦』(2016/12社会評論社 1800円)に掲載。

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南西諸島というのは、種子島、馬毛(まげ)島から、奄美大島を経て沖縄本島、そして宮古島石垣島与那国島と、台湾まで111Kmの地点まで連なっていますが、新しく自衛隊基地が作られた、または作られつつある島です。更に、長崎県佐世保に水陸機動団、馬毛島にも米軍の空母艦載機であるF35戦闘機の離発着訓練場が作られようとしています。また、後方部隊の巨大な兵站(へいたん)基地が計画されているようです。以下、自衛隊基地が出来た順に、与那国島奄美大島宮古島石垣島の状況をこのパンフレットに書かれたポイントを参考に列記します。

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(1)「共存」への不安・・・与那国島 

当初、島の人口は1500人まで減っていました。そこに、二年間で陸上自衛隊航空自衛隊がやってきました。自衛隊員200人プラス家族という、島にとって無視できない数の自衛隊。最近では、自衛隊内外の情報を収集・整理する「情報保全隊」が入り込んでいると言われています。

 

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東京新聞2019.8.6)によれば、「住民を調査・監視し、島嶼戦争の対スパイ戦の任務に当たることが想定される」との軍事専門家の意見も紹介されています。この部隊は、後述の奄美大島にも配備された模様であり、宮子島・石垣島でも配備されるだろうと言われています。

この島に行くと目につくのが、丘の上にあるレーダーです。対空レーダーが駐屯地のすぐ横にできました。もう少し東に異様な形の対艦レーダーが立っています。最近話題になっているのが、弾薬庫の存在です。これは、『東京新聞』の望月衣塑子さんが取材されました。以前から緑の四角い構造物があり、これは弾薬庫に違いないと言われていたのですが、最近はっきりおしてきました。これは(地上覆土式)といって、盛り土をして、それに横穴をあけて、中に弾薬を貯蔵する者です。この弾薬庫が、駐屯している人数に比べてものすごく大きい。これは将来必ずミサイル部隊がやって来ると言われています。

 

(2)生活圏に侵入する自衛隊・・・奄美大島

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2019年3月に奄美大島自衛隊が駐屯してきました。分屯地にはミサイル部隊が駐屯します。

この島では、山腹を切り開いて基地が作られました。ですから、島の人々が道を走っていてもこんなものが出来ているとわからない。そのため、時々刻々と基地が作られていく様子を、島の人がドローンで撮影し、発信されてきました。奄美市にできた駐屯地では、30ヘクタールという広大な山頂部分を切り開き、絶滅危惧種や希少種などの珍しいせい御体系を破壊しました。そこに、警備部隊230人と地対空誘導弾部隊60人など約350人が駐屯しました。

瀬戸内町にはやはり二つの山の上に出来ています。片方が警備部隊130人、地対艦誘導弾部隊60人など合わせて250人が駐屯する予定です。もう一方は貯蔵庫や地下弾薬庫です。山の土手に穴をあけて弾薬庫にしました。全長50mの行動が5本作られています。ここは、宮古・石垣・与那国という前線基地に対して、弾薬などを貯蔵する後方拠点になっていきます。

奄美大島は以前から、普段島民が集う講演に自衛隊が軍事車両を集結させ、いろんなことをしています。2018年の秋、まだ基地がオープンする前にも地対空ミサイルを搭載した車両が一般道を爆走訓練しました。こういう光景がこれから他の島々でも見られるようになるだろうと言われています。2019年4月1日に奄美空港自衛隊のC2輸送機が着陸しました。民間空港なのに事実上、軍民共用空港になっています。数年前から、米軍のオスプレイがここに来て離発着しているそうです。2019年9月に、奄美駐屯地で日米合同演習が行われました。

島の人々にとって、「軍事が民間空港や港湾や公園など、市民の生活圏に侵入している」と感じられているそうです。

 

(3)水汚染と弾薬庫の危険・・・宮古島

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同じく2018年に、自衛隊宮古島にも駐屯してきました。

宮古島の中心の少し北に千代田という地区があり、元はカントリークラブであったところを陸上自衛隊がミサイル基地にしました。

南西諸島配備の自衛隊の司令部が宮古島にやってくるという話です。島の南東部、海岸沿いにある保良(ぼら)集落の鉱山跡地に、ミサイル弾薬庫と射撃訓練場を作る計画です。

宮古島は、琉球石灰岩という非常に水を吸収しやすい岩石で出来ています。島には山がありません。雨が降ると全部が直ちに地下水になるので、長い間、島民たちは水不足に苦しめられてきました。2000年に非常に大きな地下ダムができて、農業用水が確保され、畑で水を撒けるようになりました。やっと渇水の危機から解放されたばかりの島でした。軍事基地が出来るとものすごく水を使います。戦車や戦闘機などを洗いますから、汚れた水が地下にしみ込むことが懸念されています。

千代田地区にできた駐屯地には、2020年3月までに地対艦ミサイル部隊と地対空ミサイル部隊250人が配備され、さらに警備部隊380人、司令部を合わせて800人が駐屯する予定です。ここはまさに前線の島で、事前集積拠点になっています。住民に対しては「造らない」と説明していた弾薬庫が作られ、中距離多目的誘導弾の弾薬が運び込まれていました。防衛相が陳謝し、弾薬を島外に運び出す事態になりました。

保良地区にはミサイル弾薬庫と射撃訓練場の建設が計画されています。与那国島と同じく地上覆土式という、盛り土をした中に弾薬庫を作ることになっています。一番近い民家はこの弾薬庫から250mしか離れていません。一番遠いところでも500mです。ですから、保良の人々の生命や財産は最初から考慮されていません。保良地区は反対決議を挙げていますが、全く無視されています。美上井翔は、2019年9月の時点で用地の過半を取得したと現地メデイアは報じています。島の人々の激しい抵抗が続いています。

下地島には3000mの滑走路があり、ジェット旅客機の離発着訓練に使われてきました。この滑走路建設の話が出た1971年、軍事転用を恐れる島民の反対に対し、当時の琉球政府と日本政府との間に「軍事目的には使用しない」という覚書が交わされ、翌年、沖縄の本土返還の年に工事着工に至ったものです。民間機の離発着訓練はその需要が減り続け、2014年には航空会社は撤退しました。2019年になって、突如、新ターミナルが建設され、航空会社が定期便の就航を開始しました。多くの島民にとっては突然の出来事。一方、沖縄本島 普天間飛行場の閉鎖・返還を求める県民の声を背景に、下地空港をその代替地にしようという声が一部の政治家や、地元の誘致派から上がりました。今後、建設中の自衛隊基地とつながる形で軍事利用されるのではという懸念が浮上しています。

 

(4)誘致派市長との攻防・・・石垣島

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2019年3月、最後に工事が着工されたのが石垣島でした。ここは一番インフラが整った島です。基地予定地は石垣市の中心部にあります。ここに、警備部隊とミサイル部隊が700人~800人駐留することになっています。

基地予定地は、於茂登山の山麓にあって、非常に美しい農地です。歴史を見てみると、沖縄戦の最後の段階で石垣島の市街地に住んでおられた人々が、日本軍に強制移住させられて写ってきた場所が、この周辺にあります。そこはかつてマラリアを媒介するハマダラ蚊の棲息地でした。3千数百名あまりの犠牲者が出ました。

戦後は沖縄本島に米軍嘉手納基地が作られました。嘉手納に住んでおられた人々がここに入植してこられて、やはりマラリアと闘いながら切り開いてこられました。

その入植近接地域に基地をつくろうとしています。平得大俣(ひらえおおまた)というところです。予定地を取り囲む4つの集落全部が反対声明をあげています。残念ながら、この島は市長が積極的誘致派で大変厳しい闘いになっています。

この島でユニークな闘いをされている人々の写真が下です。最高齢は90代半ば。小さいビニールハウスが攻防戦の中心。市は、これを「どけろ」と言ってきています。

 

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石垣島への基地建設に関連して、これまであまり語られてこなかった問題。基地予定地から2km余りのところに、VERAという愛称で地元民に親しまれてきた電波望遠鏡があります。国立天文台が建設し運用する施設で、青森県水沢から石垣島までの4か所、南北2300kmに渡って配備された同じ仕様の望遠鏡を組み合わせて、電波で見る銀河系の三次元地図を作る目的で建設されました。2019年4月、VERAを使って初めてブラックホールが観測されたというニュースが大きく報じられました。望遠鏡のアンテナの近くに基地ができると、レーダーや軍事通信などで様々な波長の電波が発信され、それが望遠鏡のアンテナで受信され、雑音となります。VERAの機能に重大な支障をきたす可能性もありますが、この問題について、天文台としての見解は明らかにされていません。基地建設に反対する運動の中で、この問題が取り上げられることもありませんでした。巨額の税金をつぎ込んで進められる科学・技術は、それにかかわる専門家だけのものではありません。

国や県、市に対抗する市民は、いわば、「ライオンと蟻」の態です。どの島でも、権力を恐れず、侮らず、軍事基地・ミサイル基地建設断念に追い込むまで、戦い抜こうという強い意志の下で行動が続く。

                                    (了)