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No.755(2020.2.2)自衛隊の中東派遣、安倍政権の狙い

《情報・提示》

今回の、自衛隊の中東派遣の裏に潜む狙いと効果について、適格な分析だと評価するので、原文を転送します。

(調査・研究)を名目とする今回の派遣は、実質の 、米軍主導の「有志連合」への参加ではないか!!                                                              

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※(半田滋 氏 のウェブサイト情報より転載。)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70129

 

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  ( 中東に派遣される護衛艦「たかなみ」(海上自衛隊ホームページより))

 

自衛隊の中東派遣、異例の「1佐」を3人も送り込む

安倍政権の狙い、

「情報収集」のためではなかったのか?

半田 滋

中東への自衛隊派遣は1等海佐(1佐=他国軍の大佐)が3人も送り込まれ、この種の海外活動では異例の高官派遣となることが分かった。

際立つのは、米海軍の中枢のひとつである米中央海軍司令部に自衛隊として初めて連絡幹部を派遣することと、その連絡幹部が派遣される3人の1佐のうちの1人であることだ。

この米中央海軍司令部は、米軍主導の「有志連合」司令部を兼ねる。今回の高官派遣は、日本政府が「参加しない」と明言しているはずの「有志連合」への実質的な参加を意味するのではないか。

 

参加していない「有志連合」の主力に?

米国が60カ国以上の国々に呼び掛けたにもかかわらず、6ヵ国の参加にとどまった「有志連合」。米国を除けば、艦艇を派遣するのは英国、オーストラリアの2ヵ国しかない中で、日本の護衛艦1隻、哨戒機2機の中東派遣は「有志連合」の貧弱な情報収集態勢の「補完」を通り越し、「主力」となる可能性さえある。

米中央海軍は中東の親米国バーレーンに置かれ、「米海軍第5艦隊」と「多国籍軍による連合海上部隊」を束ねる米海軍の主要司令部。ペルシャ湾オマーン湾、紅海などの中東海域とケニア沖などの東アフリカ海域を任務海域としている。

この米中央海軍司令部に1月中旬、海上自衛隊の岩重吉彦1佐(49)が連絡幹部として派遣され、着任した。岩重1佐は、横須賀基地にある米海軍第7艦隊司令部の連絡官や、海上幕僚監部総務課渉外班を務めた対米連携の専門家だ。

これまで自衛隊連絡幹部のバーレーン派遣は、連合海上部隊のひとつである海賊対処を任務とする「CTF(統合任務部隊)151」への派遣にとどまり、現在、CTF151では1尉(大尉相当)1人が勤務している。

CTF151の上部機関である米中央軍司令部への派遣は過去に前例がなく、連絡幹部として1佐をバーレーンに派遣するのも今回が初めてとなる。

CTF151よりも上位にある米中央海軍司令部への高級幹部の派遣は、「有志連合」が2019年11月に立ち上げた「オペレーション・センチネル(番人作戦)」をめぐり、日本が米国と密接に関わることを意味する。 

自衛隊の1佐は佐官階級の最上位にあたり、将官になる一部を除けば、防衛大学校を卒業した幹部候補生が上り詰める階級でもある。「2佐(中佐相当)と1佐では集まる情報の量が異なる」(自衛隊幹部)とされ、陸海空自衛隊とも1佐の大半は年収1000万円を軽く越える。

米軍は「連絡幹部の階級」「派遣部隊の対米貢献度」などを基準に相手国へ提供する情報の質・量を変えている。例えば、2佐より1佐の方が出席できる会議の数が多く、自ずと得られる情報にも違いが出てくる。また艦艇だけより、艦艇と航空機を派遣した方が米国との間で交換する情報の中身は濃いことになる。

 

各国が派遣に及び腰な中…

「有志連合」への参加を表明した国々による「対米貢献度」をみてみよう。

英国は駆逐艦2隻を参加させ、オーストラリアはフリゲート艦1隻とP3C哨戒機1機の派遣を表明しているが、同じ「有志連合」のバーレーンサウジアラビアアラブ首長国連邦UAE)、アルバニアはいずれも艦艇や航空機の派遣を表明していない。

一方、連絡幹部を派遣したうえ、護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機2機を派遣する日本は、実態がスカスカの「有志連合」に対し、参加表明をしていないにもかかわらず、多大な貢献をするのは間違いない。

海上自衛隊の活動海域は、イランを刺激することになるペルシャ湾とホルムズ海峡こそ除外しているが、「有志連合」が活動海域と定めたオマーン湾からバブ・エル・マンデブ海峡までの公海で情報収集するため、「有志連合」の補完的役割を果たすことになる。 

もともと海賊対処を任務としてアフリカのジブチを拠点に派遣されている自衛隊のP3C哨戒機2機は、CTF151が必要とするアデン湾上空からの監視活動の8割を受け持っており、残り2割を英国、フランスなど欧州5カ国で分け合っている。つまり、海賊対処の監視飛行は、すでに海上自衛隊が「主力」となっているのだ。

1月11日、那覇基地を出発したP3C哨戒機2機は20日、アデン湾上空からの監視飛行を開始した。海賊対処と防衛省設置法の「調査・研究」にもとづく情報収集という二足のワラジを履いた活動とはいえ、監視飛行の8割を受け持つのだから、「オペレーション・センチネル」においても中心的な役割を担うことになるのは自明だろう。

 

「調査・研究」目的のはずなのに

説明が遅くなったが、中東へ派遣される残り2人の1佐は、2月2日に横須賀基地を出航する護衛艦「たかなみ」艦長の新原綾一1佐(44)と、「たかなみ」を含む4隻の護衛艦を指揮する第6護衛隊司令の稲葉洋介1佐(48)である。

稲葉1佐は、第6護衛隊の残り3隻を上部機関の第2護衛隊群司令に預けて「たかなみ」に乗艦する。

海賊対処に護衛艦2隻を派遣していた2016年12月までは護衛隊司令もアデン湾に来ていたが、1隻の護衛艦のために護衛隊司令が日本を離れ、中東に活動拠点を移すのは珍しい。

 

ちなみに海賊対処で現在、中東へ派遣されている護衛艦を指揮する水上部隊の指揮官およびジブチに拠点を置くP3C哨戒機を指揮する航空隊の司令は、それぞれ2佐である。

海上自衛隊は、海賊対処で派遣する幹部を2佐にとどめる一方で、「調査・研究」による情報収集には1佐を3人も派遣する。これは海上自衛隊が今回の中東派遣を重要視している何よりの証拠といえるだろう。

 

閣議決定と食い違う「安倍首相の発言」

昨年12月27日の閣議決定では、自衛隊の派遣目的を「日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集」としていたにもかかわらず、安倍晋三首相は1月11日からサウジアラビアUAEオマーンを訪問し、各国に自衛隊派遣の説明をした際、13日付のツイッターで「日本関係船舶の安全を確保するため自衛隊を派遣することについても、完全な理解と支持を頂きました」とつぶやいた。

日本関係船舶の安全を確保するため、自衛隊を派遣することについても、完全な理解と支持を頂きました。 pic.twitter.com/yiFazd21Br

安倍晋三 (@AbeShinzo) January 12, 2020

派遣の目的が「安全確保に必要な情報収集」から、いつの間にか「安全確保」そのものに変わっている。「安全確保」のためには自衛隊による日本関係船舶の護衛などの具体的な対応が必要になるが、閣議決定の通りであれば、今回の派遣は「調査・研究」、つまり「見ているだけ」にとどまるはずである。

日本関係船舶に不測の事態が起きた場合、自衛隊法にもとづき海上警備行動を発令することも閣議決定に含まれるものの、発令するには防衛相が首相の承認を得る必要がある。

近くで日本関係船舶が襲撃された場合、即座にそんな手続きを行う余裕などあるだろうか。護衛艦1隻の派遣にもかかわらず、海上自衛隊が護衛隊司令を乗艦させることにしたのは、司令が現場で武器使用を決断できる立場にあると考えた結果ではないだろうか。 

1佐3人の派遣は、安倍政権が政治決断を避けてあいまいにしている中東派遣の「真の狙い」が「日本関係船舶の安全確保」であることをほのめかし、それを海上自衛隊に忖度させ、いざという時に現場に決断させる覚悟を示したものといえるだろう。

裏を返せば、これまでの自衛隊海外派遣で繰り返されてきたのと同様、機能不全に陥った「シビリアン・コントロール」を制服組が補い、「終わりよければすべてよし」につなげるシナリオが今回も描かれたといえる。

 

家族は混乱しているのでは?

筆者はP3C哨戒機が那覇基地を出発する前の1月10日、翌11日に海上自衛隊が実施した家族説明会の資料を入手した。

この資料では、自衛隊の活動について「日本関係船舶の安全確保に必要な情報を収集」「海賊対処行動に支障を及ぼさない範囲で実施」とあり、意外にも海賊対処が「主」、情報収集が「従」となっている。

 

                                 ( 自衛隊の家族説明会で配布された資料(1))

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その一方で、安倍首相は自衛隊の活動について、情報収集を踏み越え、「日本関係船舶の安全確保」と言い切っているのだから、家族は混乱しているのではないか。

別の家族説明資料には、派遣される隊員はいずれもPKO保険に加入した旨の説明があり、「海外派遣者の治療等(怪我や病気)を補償」と書かれている。さらに「死亡・7日以上の入院時、ご家族が現地に赴くための費用」についても説明している。

 

                                  自衛隊の家族説明会で配布された資料(2)

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最悪の事態を想定するのが組織の務めとはいえ、あまりに無神経な表現ではないだろうか。担当者が家族説明会でどのように説明したのか、気になるところだ。

とはいえ、この家族説明資料に書かれている内容についてさえ、政府は広く国民に対しては説明していない。今回の中東派遣とは何なのか、本当に必要性はあるのか、開かれた議論を抜きに航空機や艦艇の派遣ばかりを先行させ、既成事実化させてよいはずがない。

                                                                                                                           (以上)