『東京新聞』(2019.7.1)の(こちら特報部)の特集記事が興味ある指摘。それを参考に考えてみた。(以下、ポイントを列記)
「とりあえず現状維持」
「議論 避ける傾向強く」
「若者の自民党支持率なぜ高い?」
「自民党政権への(親近感)拡散 裏にネット戦略」
「一強政治に慣れ? 権力側の思うつぼ」
・2012年の第二次安倍政権発足以降、国政選挙のたびに自民党が第一党を確保している。強さの一因として、かねてから若者の支持が多いことが指摘されてきた。その現状と背景について。
・民主党政権のころまで、自民党の支持率は年齢が上がるのに比例して右肩上がりに高くなるのが常だった。しかし、12年の第二次安倍政権発足後、各種世論調査では、概して自民の支持率は高齢者と若者が高く、30~50台が低い。
・以後、補選を除き四回あった国政選挙は自民が勝利。そこに若者の支持が貢献したのは間違いない。
この傾向は高校生以下の世代も同じと言えそうだ。
・学校教諭らでつくる「模擬選挙推進ネットワーク」
・学校教諭らでつくる「模擬選挙推進ネットワーク」http://www.mogisenkyo.com/
によると、16年参院選の際に各地の中学・高校・大学・街頭・ウェブで未成年者が投票した模擬選挙で、比例得票率は最多が自民(35.7%)で、次いで当時の民進党(18.2%)だった。
これは参院選の結果とほぼ同じ。
・12年の衆院選以降の模擬選挙はすべて自民が比例第一党。
(街頭とウェブ)に絞ると、自民の比例得票率が46.8%ととりわけ高いことが特徴的。
「自民や安倍政権の情報をネットで知った若者が、印象だけで投票している面」もありそうだ。
・なぜ若者は自民を選ぶのか? 背後に「現状維持」の意識が強く働いていそうだ。これまで選挙で投票しても自分の生活や社会が良くなったという経験がないからではないか。
・自民党や安倍政権の情報をネットで知った若者が、印象だけで投票している面もありそうだ。
この傾向は、政権や自民党がSNS(会員制交流サイト)を使って、広報戦略を展開していることにも関係が深い。安倍政権と自民は、潤沢な資金と組織的発信システムで、ネットを通じた若者への接近に努め、親しみやすい印象を拡散している。矢継ぎ早に各種パンフレットもばら撒いている。
・若者はインスタで憧れの俳優や芸能人・アイドルと一緒にいる安倍首相の画像を見て、親近感を抱く。画像中心で議論が起きにくく、首相も積極的に使っている。
・対する野党は、立憲民主党などはインスタをすら使っておらず、国民民主党もフォロワーは千数百人どまり。
・SNSでもツイッターでは政権や自民への批判が相次ぐが、こうした批判は、安倍政権を評価しない人たちの中で共有されても、必ずしも、若者に届いていない。
・政治的に関心が薄い若者たちには、安倍政権や自民が今の経済を回していると映り、ネットで作られた親しみやすいイメージもあって、支持しているのではないか。
・だが一方では、若者の「親しみやすさ」を重視する傾向は、現実世界ではマイナスにも働くことが多い。
・ある調査では、「学生の間でコミュニケーション能力として「感じの良さ」を評価する傾向が強い」と出ているようだ。違憲が異なる相手と頑張って対話するという「面倒くさい」プロセスを避けがちになっている。
・こうした風潮は、若者が育てられてきた長年の、深く考えない教育の“成果”でもあるのではないか。
・政治や社会に不満があっても「個人での解決」を目指し、仲間と共同で変えようとする行動に結び付きにくい。
・結果的に、野党が安倍政権を批判しても支持が広がらず、若者の多くが選挙で消極的に自民を支持する悪循環を生む。
・上記も事実だし、それ以上に根が深いのが、大きな依って来るところに、立憲野党の、「この私たちの国をどういう国に導いてゆくか」というビジョンとストラテジーがしっかりと成立していないところに最大の原因があるのではないかとも考えられる。
・だから、安倍政権が野党の主張に耳を貸さず、まともに議論しないで、堂々と隠蔽しても、ある程度の追及でお茶をにごらされておわってしまう。その繰り返し。
こうした国会の風景を若者たちは(若者だけでもなく)批判的に捉えるよりも、「選択の余地がない」とみてしまう。
・結果、議論して政治的課題を解決するという手続きが軽んじられる中で政治不信が広がれば、政党支持が機能しなくなり、権力側の思うつぼになる。
・揚げ句の果てが、かつて来た、“ファシズム”を呼び込むことになるのだろうか。