戦争能力の充実にひた走る自民党政権
《考察》
『東京新聞』の(税を追う)のコラムは、昨年来一貫して、自民党政権主導での予算の軍事化の大きな転換を追い続け、実に深く掘り下げて有用な情報を提供してくれている。
2019/1の「政治主導での「空母化」」という主題での報道を参考に考察。
(注) 以下、一部は、同記事からの引用であることをお断りしておきたい。
・安倍首相官邸は、戦後一貫して保持してきた、いわば国是でもあった専守防衛に対して、昨年2月の衆院予算委員会で、「専守防衛は、純粋に防衛戦略として考えれば大変厳しい。相手からの第一撃を事実上甘受し、かつ国土が戦場になりかねない 」と答弁している。
このあたりから、明瞭に官邸主導の敵基地攻撃論が一気に浮上してきている。
ミサイルの射程は九百キロと五百キロ。戦闘機F15やF35Aに搭載する計画で、日本領空や公海上空から他国の領土内への攻撃も可能となる。
首相は「敵基地攻撃は目的としない」と否定する一方で、「先に攻撃した方が圧倒的に有利になっているのが現実」と先制攻撃の脅威に言及。あたかも専守防衛では国は守れないといわんばかりである。
・昨年末に改定された新しい「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(中期防)」のもう一方の目玉が、「全長二百四十八メートルの「いずも」型護衛艦二隻の甲板を改修して造る事実上の空母化だ。
軍拡を進め、沖縄県・尖閣諸島や南西諸島の周辺海域へ進出を図る中国を念頭に、領空・領海侵犯を許さないための防空態勢を強化しようと、まず短距離離陸と垂直着陸ができるSTOVL(ストーブル)戦闘機F35Bの導入案が出たという。」 (STOVL : 短距離離陸垂直着陸機)
・島しょ部は滑走路の長い飛行場が少ない。STOVL機を導入すれば離着陸できる空港が増えて戦闘機運用の柔軟性が向上する。その上で、対潜水艦哨戒ヘリを運用する多用途の護衛艦にも搭載可能。
・憲法に基づく専守防衛を逸脱する恐れがある空母化計画。急激に膨張する防衛費の問題と合わせ、日本は周辺国との軍拡競争へ進んでいる。
・一方、「いずも」型護衛艦の改修について自民・公明両党は、戦闘機を常時搭載しないことなどから、憲法で保有が認められない攻撃型空母に当たらないと結論づけた。
「他国に脅威を与えないためにも、甲板上に常に戦闘機が装備されている絵柄はよくない。必要な時に離着陸するという運用は専守防衛を表すのに大事な要素だ」
呼称も多用途運用母艦は「空母」を連想するとして多用途運用護衛艦で合意した。さらに新中期防では従来通り「多機能の護衛艦」を使った。世論を気にして変更を避けた。
中谷元・元防衛相は「相手の国に破滅的な打撃を与えるような攻撃型空母は憲法上持ち得ないのが前提。攻撃型でないことを担保するために多用途運用護衛艦に落ち着いた」と話す。
・なぜ政府は空母化にこだわったのか。
政府は昨年十二月、旧型で古くなった九十九機のF15の代わりに今後、F35AとF35Bの計百五機を順次購入すると決めた。総額一兆二千億円。背景には兵器売り込みで対日貿易赤字を減らそうとするトランプ米大統領の圧力があるのは明らかだ。
・ 首相が議長を務め、国防や外交上の重大政策を議論する国家安全保障会議(NSC)。実動部隊の国家安全保障局の幹部は「F35百機を調達する結果として、貿易不均衡の是正と日米安保体制へのアピールという側面はある」と話し、米国への配慮を認めた。
「いずも」を使って何をするのかという作戦思想が作られず、必要性を正面から議論せず、机上の空論で決まった、と防衛現場では語られているという。
通商や外交を巡る官邸の思惑がからんで浮上したいずもの「空母化」。
日本が再び軍拡競争の道を突き進んでいる。