2019.6.7)
米軍指揮下での一体運用体制構築が進められる:自衛隊
安保法制の5カ月前の1915年4月27日、「日米防衛協力のための指針」(日米新ガイドライン)が締結された。
その中では、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が起きたと判断すれば、南シナ海や中東といった日本から離れた場所でも、そこで戦う米軍に自衛隊が補給などの後方支援を行うことを盛り込んだ。
また、国際的な安全確保のために軍事活動を行う米軍を後方支援することも、自衛隊の役割として明記した。
日本の防衛については、哨戒や訓練など平時での協力を強化したほか、武力攻撃までは至らない侵害が起きた場合の役割分担を追加した。
日本が武力攻撃を受けた場合の対応では、尖閣諸島をはじめとする南西諸島など、中国の台頭で脅威が高まっている沖縄島しょ部に対する対応を新たに盛り込み、日本が新設する水陸両用部隊を中心に、自衛隊が主として上陸阻止、奪還作戦を行い、米軍が支援するとした。
米軍が巡航ミサイルなどを使って、敵基地を攻撃する場合に、自衛隊が「必要に応じ、支援を行うことができる」と追加された。
集団的自衛権の行使を反映し、米国に向けて飛ぶ弾道ミサイルを日本がミサイル迎撃で協力することや、国際海峡での機雷掃海での協力などを明記した。
「陸上総隊」の創設と「日米共同部」
2018年3月27日、全国に5つある方面隊を一元的に指揮する司令部として「陸上総隊」が朝霞駐屯地に新設された。
大日本陸軍の独断専行の反省から陸上自衛隊は5つの方面隊に分割されてきたが、新ガイドラインと戦争法の成立によって、戦争する自衛隊の中心として「陸上総隊」が新設された。
その役割として「陸上総隊司令部は、統合幕僚監部、自衛艦隊司令部、航空総隊司令部及び米軍との間における平素からの運用に係わる調整を一元的に実施します。」としている。
陸上総隊には直轄部隊として9つの部隊がある。
「水陸機動団」は長崎県相浦に新設され、日本の「海兵隊」として沖縄島しょ防衛等をはじめ最前線の戦力を担当する。
「第一空挺団」はアジア太平洋戦争で各地への侵略の尖兵であった「空の神兵」といわれた落下傘部隊の継承部隊である。
また「中央即応連隊」は陸上総隊の主管部隊であり、緊急事態への即応部隊であり、PKOの先遣隊を勤める最強の部隊でもある。
「陸上総隊」は朝霞駐屯地に新設されたが、その中心の「日米共同部」は座間にある在日アメリカ陸軍司令部の中に配置された。朝霞駐屯地の本隊と離れて米軍傘下にいることが米軍と陸上自衛隊の関係を示している。
海上自衛隊は戦前の「連合艦隊」を継承して「自衛艦隊」が司令部となっている。
「自衛艦隊」は在日米艦隊と同じ相模原に司令部を置いている。そして日常的の米艦隊との共同訓練(作戦)を行っている。
全国の戦闘機部隊、「ミサイル防衛」網を指揮する航空自衛隊の航空総隊司令部は、2006年に府中基地から米軍の横田基地の第5空軍司令部と隣接した場所に航空総隊司令部を建設し、地下には「共同統合運用調整所」が配置されている。
現代戦においては情報の重要性は高く、自衛隊が戦闘を行い、米軍と連携し指揮を受けるためには情報システムの統一は不可欠である。2018年5月にはパソコンのシステムまでがアメリカと一体化されたといわれている。
米軍のアジア戦略に従った共同軍事演習
2017年末には安倍政権は、北朝鮮と米国の緊張を「国難」と称して、米軍の軍事行動に全面的に協力した。
自衛艦隊は米海軍の「空母打撃部隊」と行動を共にして、11月には朝鮮近海で米原子力空母3隻と挑発的な実戦型の軍事演習を行った。そして10月10日の朝鮮労働党創立記念日に合わせて、日米韓の弾道ミサイル演習、爆撃機と戦闘機による空爆演習などが行われた。
2018年には米国だけでなく、英海軍、仏海軍、豪海軍との演習を行い、10月には米比海兵隊との合同演習に陸上総隊の水陸機動団が参加した。
演習は南シナ海のスカボロー礁から250㌔の比海軍基地で行われた。
日米「海兵隊」のAAV(水陸両用車)が並んで上陸演習を行った。
この演習の直後に、種子島で米軍と水陸機動団のAAVは上陸演習を行った。沖縄の米海兵隊の多くの部隊がグアムに移転したあとは、自衛隊の水陸機動団が代替すると言われており、1年の大半を南西諸島での訓練=存在示威に使う予定である。
9月17日の報道では、自衛艦隊は、潜水艦「くろしお」を南シナ海に極秘派遣し、周辺を長期航海中の護衛艦3隻と合流させ、対潜水艦戦を想定した訓練を実施したと発表した。
まさに中国が設定した「九段線」の内側であり、「対米向け戦略ミサイル潜水艦」の潜伏海域での「演習」である。
公然たる示威活動であり挑発そのものである。