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戦争と、貧困・抑圧・差別の構造的暴力がない社会実現のために!

No.702(2019.5.31)「ピースおおさか」の戦争展示に関する文書非公開に最高裁判決、勝利!!

 先日5月24日の最高裁小法廷で、「大阪維新」が支配する大阪府・市に対して、戦争・平和に関する大阪の展示施設の ”加害”  の面を全面撤去されている問題で、「戦争責任問題は、市民が広く議論できる条件・環境が保障されねばならないという趣旨で、情報公開するべきだった」という論旨で、府と市が全面的に敗訴・決定しました!

  「大阪維新」が支配する大阪府大阪市が全面的に敗訴したのは画期的な最終判決でした。

 とりわけ、歴史認識に関する公論の場こそ、情報公開すべきであるという最終判決の持つ意味は大きい。

 「維新」の政治が揺らぐほどのインパクトがある判例です。

 

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      (今回の最高裁判決の前裁判(大阪高裁)での勝訴の模様)

 

 一方で、私たちは過去の歴史をどれだけ直視しているでしょうか?

代表事例が、「徴用工」問題、日本軍「慰安婦」問題に代表されるように、過去の戦争と植民地支配をめぐる「歴史認識」の隔たりがその根底にあります。 

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 2013年、「ピースおおさかは、これまで展示していたほとんどの加害展示を当時の橋本徹大阪府知事松井一郎大阪市長(両:維新の会)によって撤去され、被害についても真正面から受け止めるのではなく、差しさわりのないものに差し替えられました。

 現在「ピースおおさか」を訪れる見学者(特に子どもたち)は、侵略戦争における残虐な加害の歴史も、また侵略戦争にかり出された日本の人たちが遭遇した不条理な被害の歴史も知らされないまま、誤った「歴史認識」を植え付けられています

 私たちは、被害者であったと同時に、一面は加害者でもあった事実から目を背けてはならないと思います。これは、(自虐史観)などというものではなく、戦争があってはならないという共通の叫びだと思います。

 いまほどアジアから「歴史認識」を問われているときはないというのに、新聞やニュースを見ても、教科書を読んでも、アジアからの問いはほとんど載っていません。

 わたしたちはアジアから問われている本当の「歴史認識」を市民の手で取り戻し、次世代に、”不戦と平和” の道しるべとなる全国各地にもある平和資料の館を、書き換えることなく史実に添って保存する責任があると思います。

 過去の対外戦争によりアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えたことなどの厳粛な加害事実を相対化し、被害当事者を辱めるようなことがあってはなりませんし、戦争放棄憲法の精神を否定する展示とならない明確な措置が取られなければなりません。

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先ず、「ピースおおさか」についての運動を継続している、

"設置理念に則ったピースおおさかを取り戻す会"

のウェブサイトは下記です。

http://regainpeace.blog.fc2.com/ 

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 『大阪日日新聞』は、5月28付で、今回の最高裁判決を次のように伝えています。その要旨です。

(全国紙は勿論、自分の知る限り、主要リベラル地方紙も報道していません。)

(画像は、当方で追加したものです。新聞報道も要点を抜き書きしてあります。)

                

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戦争博物館「ピースおおさか」(大阪市)(現:大阪国際平和センター)が旧日本軍による加害行為の資料を展示から外した経緯を記載した文書を改装前に公開せず、知る権利を侵害されたとして、三重県の竹本昇さん他が大阪府大阪市に損害賠償を求めた二件の訴訟で、最高裁第3小法廷は、大阪府大阪市の上告を退ける決定をした。最初の大阪地裁での敗訴を否定した、二審の大阪高裁による、10万円の賠償を是認し、提訴当方の勝訴を命じた。

 ((注)本来は、資料の不当撤去自体を訴えるのが主旨だけれども、裁判闘争上、上記の賠償請求で臨んだものだと思います。)

    

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          (2015のリニューアルを伝えた、新聞記事)

 「ピースおおさか」は、大阪大空襲の展示のほか、旧日本軍の加害行為とされる内容も展示していた。

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 (撤去された加害の歴史展示例1)    (撤去された加害の歴史展示例2) 

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          (撤去された加害の歴史展示例3)

                 

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    (大阪大空襲等の被害ばかり表示物を見せられる学童)

 

  しかし、大阪市長が(当時の)橋下徹 大阪市長松井一郎 大阪府知事の、大阪維新の会の二人に変わった後、展示が「自虐的だ」として見直しの作業が進められ、2015年4月に」全面改装された。

この見直しの過程で、設置理念が骨抜きにされると、当時の「『ピースおおさか』の危機を考える会」の竹本昇さんほかが、関連公文書の情報公開を請求したが、公開を拒否された。竹本さんらの異議申し立てに対し、本来語られるはずの審査会も開かれないまま」改装再オープンされ、記念館の名前まで変えられてしまった

その後、知る権利を侵害され精神的苦痛を受けたとして、大阪府大阪市などを相手に損害賠償を求めて提訴した。

(一審目の)大阪地裁ではすべてを退けられた。

(二審の)大阪高裁は、竹下さんらの主張を認め、一審判決を取り消し、大阪府大阪市に対して5万円の慰謝料を払うよう命ずる逆転判決を言い渡した。

大阪府と大阪市はこれを不服として上告したが今回の最高裁は上告を退ける決定を出した。

これにより大阪府大阪市が情報公開しなかったことは違法とする大阪高裁の判決が確定した、

竹下さんらは、判決勝利後、このように述べている。

 「被害と加害の両面から戦争の実相に迫る、設置理念にのっとった ”ピースおおさか” を取り戻すために展示の改善を求めていく。」

竹下さんらの求めに対し、情報が隠されたことは、すべての市民に情報が隠されたことに等しい。74年前の戦争は、『国民に真実を知らせないこと』を原動力として進められた。同じことを繰り返してはいけない。

                                                             

                                 (了)