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No.700(2019.5.29)自衛隊の南西シフトについて

(参考図書)

小西誠:『自衛隊の南西シフト』社会評論社 戦慄の対中国・日米共同作戦の実態  

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(参考)下の地図をご覧ください。

先ず、“ 極東 ”という概念。我々が日々見ている世界地図は、日本が真ん中にあって西にアジア・ヨーロッパ。東にアメリカ大陸。しかし、欧米から見た世界地図は違う。

このようになっている。日本は“極東”、まさに世界の東の果てにあり、落っこちそうな位置にあるようにすら見える。

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一方、中国側から見た日本列島

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米国の「オフショア・コントロール」軍事戦略(後述)では、日本列島~琉球列島弧~台湾~フィリピン~ベトナムを結ぶ線を「第1列島線」とし、ここを海上封鎖すれば、中国からの輸出品を輸送する船舶の航行は封鎖することができる

 

自衛隊の「南西シフト」三つのポイント週刊金曜日5/24号)(No.1233)を読んで。 

 

自衛隊の「南西シフト」

 

★ポイント1「日本を守る」でなく、

       「日本を盾にする」

・小西誠氏(元自衛官の軍事ジャーナリスト)によれば、今年3月から展開が急ピッチで進んでいる、沖縄・宮古島・鹿児島・奄美大島への自衛隊配備

 この配備の根拠となっているのは、米国防衛大学戦略研究センターでの「オフショア・コントロール」という防衛戦略だという。これは、国防費削減を続けなければならない米国が、自国の経費負担を減らしつつアジア太平洋地域への影響力を維持するためのものである、という。

・仮に中国との軍事衝突状態が突発するとしても、米国から遠く離れた地域での「海洋限定戦争」にとどめ、米中全面戦争にエスカレートさせないことを目的にしている。

・ここで、「捨て石」として設定されているのが、米国が「第一列島線」と位置付ける宮古島石垣島など南西諸島という事になる。

日本を防衛するためというよりも、米国の影響力維持のために日本を「盾」にするという戦略だ。

・ではなぜ、2015年に改訂された「日米防衛協力のための指針(ガイドラインがその前提となる配備なのか。それは、この中で、「南西諸島においては自衛隊が主体となり、米軍がその作戦を支援する」という役割分担が明示されているからだ。

 つまり、米国の軍事戦略であるにかかわらず、最前線を担わされるのは日本の自衛隊なのである。

・そして、安倍自民党政権はこの「指針」に従い、自衛隊の「南西シフト」が立案され、先ず2016年に与那国島、2019年に宮古島奄美大島への自衛隊配備が着々と実行に移されている

 

★ポイント2中国の「進出」が先か、

       米日の「威圧」が先か

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・前出の小西誠氏によると以下のように説明されている。「『海峡封鎖』と言うと、中国の中国の軍用船の通過だけを阻止するだけと思われがちだが、『オフショア・コントロール』戦略では、中国から輸出製品を運ぶコンテナ船なども、海洋封鎖の対象となるり、中国の輸出入経済への”妨害”も戦略に織り込まれている」という。

陸上自衛隊研究本部の中澤剛氏(2013年当時、一等陸佐)が『陸戦研究』(陸戦学会)での論文で、次のよう解説している。

・「(オフショアコントロール戦略は)、中国の弱点である輸出依存経済に着目し、いざとなれば遠距離経済封鎖を中国に強制しうる態勢を平素から誇示することで、『中国を現行の国際秩序に従わせる』という目的を達成しようとするものである」。

・言い換えれば、中国の「海洋進出」に米日が「対応」しているのではなく、逆に米日の「威圧」戦略が先行して存在し、それに中国が「対応」する形で軍事増強を進めているという構図。

・(しかし、防衛省はこの点を意図的に隠して「南西シフト」の配備を進めている

・そして、〈即応展開〉のために与那国島石垣島宮古島に配備された「先遣部隊」、(一次展開)のための「即応鼓動連隊」、(二次展開)のための「機動師団・旅団」、(三次展開)のための「増援部隊」という態勢で「南西シフト」は、与那国島から種子島馬毛島まで南西諸島全体で急速に新基地建設が進められている

新しい「防衛大綱」「中期防衛計画」では、南西諸島のいずれかに「島嶼防衛用高速滑空弾部隊・2個高速滑空弾大隊」の配備も盛り込まれている。

 

 (注)新しい「防衛大綱」「中期防衛計画」       f:id:syounantheo:20190526144911j:plain

 

    詳細は、下記の防衛省ウェブサイトを参照ください。

https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/index.html

            

 

★ポイント3軍事緊張を常態化し、9条改憲へ誘導する

 

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・前出の小西さんによれば、宮古島奄美大島に配備された陸自の「守備部隊」も、島の住民を守るためのものではなく、ミサイル部隊を守る配備されたものであり、今後大幅に増強されるに違いない。

・さらに、各島の民間空港の「軍事共用」化や港湾の「軍港」化も検討されている。既に複数の防衛省関係者は、南西諸島に対して「不沈空母」という表現で言及している。

軍事緊張の常態化は、9条改憲を目論む安倍政権にとっては実に好都合である。「中国が南西諸島を標的にしている」から「自衛隊なしでは島々を守ることはできない」というキャンペーンを展開し、この地域で意図的に「有事」を創り出すことで、9条改憲への世論誘導に利用している。

自衛隊の「南西シフト」が「日本や島々を守るための態勢ではない」ことを広く共有し、配備に抗うことが、日本国憲法の下、平和な地で暮らす権利を守るために重要な課題となっている

 

                                  (了)