先日、『東京新聞』2019.5.2付のコラム:「編集局南端日誌」に、良い記事がありましたので紹介します。
「 明日は憲法記念日。
「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」(前文)した日本国憲法の施行から七十二年目の節目だ。
「反戦川柳句集~『戦争したくない』を贈ります」を読んだ。
(※この本です。)
労働問題に取り組むレイバーネット日本川柳班が昨年末に発行した冊子。憲法を採り上げた作品の中に、ずしりと重い句があった。
★ 九条をずっと支える戦没者
憲法九条が戦争のおびただしい犠牲を背景に、守られてきたことを伝える。
だが、最近は戦禍の記憶が風化しきっているのも事実。民衆の心意気が息づく川柳は、そこも遠慮なく突く。
★ 子を産ませ爆弾にした国忘れ
★ 時々は思い出せよと不発弾
★ 敗戦を知らず戦の議論する
安全保障関連法をテーマにした作品も。国家権力を縛る立憲主義を理解しない現政権への批判だ。
★ 国縛る縄をほどいて民縛る
目隠しされた国民を、「憲法」が縛りあげている挿絵が添えられている。
中でもタイムリーな句がこれだろうか。
★ 武器持たず裏も表もない二項
二項とは「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とする九条二項のこと。
自民党は改憲に関する資料で、「九条の二」を設けて自衛隊を明記するが、一、二項の条文や解釈は全く変えないと説明している。
しかし、憲法学者らは、自衛隊が憲法に書き込まれれば二項は死文化し、軍備拡大を防いでいる歯止めを失うと懸念している。
一方、保守派にも二項を残したままでの改憲には疑問の声が根強い。いろいろ「裏」はありそうだ。
句集を企画した川柳人の乱鬼龍(らんきりゅう)さん(六八)は「多くの犠牲の上に平和憲法はある。それがひっくり返される世の中でいいのか」と危ぶむ。
政治も法律も、本来は一字一句にこだわる世界。だが、安倍晋三首相が福島第一原発の汚染水を「アンダーコントロール」と述べるなど、「言葉が軽くなっている」と話す。
「手と足をもいだ丸太にしてかへし」の句で知られる戦前の川柳作家、鶴彬(つるあきら)は治安維持法違反容疑で逮捕され亡くなった。そんな時代にならぬよう、言葉で切磋琢磨する川柳人たちは世に問い続ける。
乱さんは大阪にある鶴の顕彰碑の前でこう献句している。
★ 鶴は千年その魂は今も生き
(了)