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No.649(2019.4.9)「種子法」廃止批判

      「種子法」廃止一年~

 種を守ることの大切さを考えなおそう !

  米、麦などの主要作物の優良種子の安定供給を地方自治体に義務付けてきた、

「主要農作物種子法(種子法)」が廃止されて、4月で1年が過ぎる。

 この法改定で、民間企業の種子ビジネスへの参入促進という商業的目的のため、地域に根付いてきた多様な品種が将来、多国籍企業の種子に淘汰され、消えゆくのが必至だ!!

        (注)画像等一部は、『東京新聞』2019.4.7 日曜版「大図解シリーズ」を参考引用

 

1)種子生産の流れはこう変わりつつある。

 米その他の種(タネ)は、農家と各地域の農業試験場などの公的機関が積み重ね、長期にわたって育成してきた。

 特に、米、麦、大豆等の主要作物は、その土地に適合した優良な品種を奨励し、農家に提供してきた。

 野菜の種は、30~40年前は100%国産であったものが、現在は90%以上を輸入に頼っている。規格のそろった野菜の大量供給のニーズに伴い、規格の揃った野菜の都市部への大量供給という商業的ニーズにより、生産効率の悪い固定種(従来品種)は減少し、今や種の90%超は海外で生産されたF1種というものに置き換えられている

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 米などの種は、農家とともに農業試験場などの公的機関が長い年月をかけて引き継いで育成されてきた。

 地方自治体も、米・麦・大豆などの主要作物について、その土地に合う優良な品種を「奨励品種」として農家に提供してきた。これは日本の農業の自然に見合った合理的なシステムとして受け継いでこられた。下図のような流れ。

  

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(2)これまでは、気候条件に合った品種が開発されてきた。

 それぞれの地域特性に適合する品種が農業試験所などで育種、選定されてきた。それにより、温暖化や異常気象にも強く、食味もおちない米などが開発されてきたという。 

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 多様な品種が、凶作のリスクもかなり軽減してきた。

種の多様性が、農家を救い、食卓の安心・安全にもつながってきた。

 現在、日本で栽培されている300種類を超えるコメの品種のほとんどは、地域の気候、風土に見合ったものが各自治体の農業試験場などで開発されてきた。

 そして、地方交付税交付金などにより、種は比較的低価格で入手することができてきた。 

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 (3)ところが、いきなり「種子法」は葬られた!!

  種子法廃止は、2016年秋に開かれた、安倍政権下での(規制改革推進会議)の農業ワーキンググループなるところで提起された。

 ”種子法が民間企業の品種開発意欲を阻害している” というのがその理由。

 翌2017年4月には衆参両院あわせて12時間ほどの(委員会審議)で突如廃止が決まった!

 その結果、早速下記のように激変している。

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日本の農業が、商業資本、とりわけ、世界的に支配しつつある、モンサント社やデュポン社といった独占企業の支配下に置かれてきている。

 モンサント社は、例の自然破壊の農薬で有名な企業。 

 

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(4)それに対する国内の動き。

「このままでは、日本の農産物の多様な品種が店先から消える」  

 元農林水産大臣山田正彦氏が、「日本の種子を守る会」を結成、廃止の影響を各地で説いてきた。

「一つの品種が開発されるまでには10年、増殖には4年かかる。各地域の銘柄米を手ごろな値段で口にできたのは、膨大な歳月と労力をかけ、その予算を税金で賄ってきたからです」(山田氏)  

 山田氏はさらに「日本の多様な品種を大企業の寡占から守っていかなければならない」と強く警鐘を鳴らしてきた。

 日本ではすでに「みつひかり」(三井化学)、「つくばSD」(住友化学)、「とねのめぐみ」(日本モンサント)などの籾米が流通。主に多収量の業務用米として用いられている。 「農業競争力の強化が国の方針。生産規模の小さい銘柄は集約されるので、国内の品種はいずれこういった大企業の品種に置き換わっていく。従来の品種を作り続けたいと思っても、各都道府県が生産をやめれば種子が手に入らない。やがて外国の多国籍企業の種子を一般農家は買わざるをえなくなっていく」(山田氏)

  しかも、種子ビジネスを行う企業としては、莫大な開発費を回収する必要がある。そのため、「F1種」という一世代に限って作物ができる品種を販売する。

 自家採取できないので、農家は毎年企業から種を買わなければならない

 「種子ビジネスに乗り出してきているのは化学企業が中心。農薬と化学肥料もセットで売り、契約によって作り方も指定される」

 そうなると価格は企業が決めることになる。現在、民間の種子の値段は、公共の品種の種子の4~10倍。種子法によって守られてきた公共の品種がなくなれば、農産物の値段が上がることは必至。

 これに対して、国会でも種子法廃止に抵抗する動きが出ている。昨年5月に野党6会派が提出した種子法復活法案は6月7日、衆議院農林水産委員会で審議され継続審議となった。

・業務用の品種の作り手がいなくなるから民間を応援しよう、と政府与党は説明してきた。だからといって、各地が独自で種を作ってきた体制をなくすことはなかった。

・米の民間品種のシェアは、まだ0.3%にすぎない。移行の体制も整っていないのに、大阪府奈良県和歌山県は昨年度から種子の維持についての認証制度を取りやめてしまった。

 弊害が明らかになる前に何とかしなければならない!!

 

 (5)このような対抗の動きもある。 

 

・種子の生産を継続することとなった新潟県

 県の条例によって、種子の生産を継続することとなった新潟県農業総合研究所作物研究センターでは、行う業務は「まったく変わらない」という

 ・条例を作り県レベルで対抗

 一方、県レベルで対抗しようという動きも出てきた。

 新潟県兵庫県、埼玉県は条例を制定し、県の公的機関が種子法廃止前と同じように種子の生産・供給が可能な体制を続けられるようにした。

 例えば、新潟県長岡市内にある農業総合研究所作物研究センター

 「こちらで作っている種子は、コシヒカリ新之助など『推奨品種』14品種、それに準じる新潟次郎など『種子対策品目』9品目です。国の種子法がなくなって県条例となったので事務的手続きなどの変更はありますが、種子を生産・供給する基本的な業務自体に変わりはありません。これまで通りの多種多様な品種の生産・供給ができる体制は維持されました」  

 これら3県の条例制定は、日本の農業を守る貴重な取り組みとして全国に広がる可能性があると言われている。

 「種子法廃止の背景にあるのはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)です。日本の多様な品種を守ってきた種子法は、TPPにおいては自由な競争を阻害する『非関税障壁』とみなされてしまうのです」と山田氏は解説する。

 そのうえ、「TPPでは『遺伝子組み換え食品の輸入も促進する』となっている」という。  

 弁護士でもある山田氏は現在、種子法に焦点を絞りTPP交渉の差し止め・違憲訴訟の提訴を準備中。すでに原告は700人を数え、今年8月には提訴の予定だという。

 

  以上、調べてみた種子法廃止に関する動きは上記のようになっているようだ。