1月19日にNHKテレビは「アメリカVS中国~未来の覇権争いが始まった」を放映した。
米国の世界覇権の基礎として
①IT技術、
②軍事技術、
③金融覇権
があったが、それが中国の「一帯一路」政策と「中国製造2025」によって、その優位が失われかけていること。それを自動運転技術の発展競争と、ドル金融支配に風穴を開けかねない「ブロックチェーン」技術の面から解説された。
その内容に「ブロックチェーン」技術の説明などの補足を追加した。
★ 急激に発展する中国のIT技術
中国深淵にあるベンチャー「ロードスターAI」は、1年で自動運転のレベル4の車を開発した。
この会社の技術者たちは米国の企業=アップルとかグーグルなどで働いていた。
彼らのように、米国や海外の大学で学び、企業で働いてから、中国に戻る人たちは「海亀」と呼ばれ、中国政府は起業する時には、手厚く援助・投資している。
《 アメリカの大学や研究所への留学者 》
2009年の統計では中国が12.8万、インドが10.5万、韓国が7.2万、以下カナダ、台湾、日本(2.5万)と続く。
日本人は語学研修が多いが、中国・インドは半数が大学院以上に留学する。
そしてアップル、マイクロソフト、グーグル等のIT企業は彼等を技術者として雇
用することで成り立っている。
それだけでなく、グーグルやマイクロソフトなど5社のCEO(最高経営責任者)
はインド出身者である。
中国人も以前は米国市民権を得てキャリアを築くことが目標であったが、今ではキ
ャリア構築を母国での起業・就職に求めている。
米政府は中国技術者が米国企業で得た知的財産を不当に持ち帰っているとか、産業スパイが技術を盗んでいるとして取り締まりを強化している。
また米国のハイテク企業が中国へ進出することも規制しようとしている。しか
し中国の巨大な市場と労働力、そして出資力はベンチャー企業を含む多くの企業を中国に向かわせている。
《 「中国製造2025」》
習近平が2015年に発表。10の重点項目を挙げ、製造業の高度化を目指す。建国
100年の49年に「世界の製造強国の先頭グループ入り」をめざす。25年までには
「世界の製造強国の仲間入り」を目指す。
《 半導体製造装置出荷額で中国が世界1位に 》
2018年第3四半期の国別出荷額で中国が1位となった。
従来は韓国と台湾が首位を維持してきた。これにはサムスン電子の西安工場、SKハイニックの無錫工場、TSMCの南京工場、インテルの大連工場なども含まれている。
但し最近は米中ハイテク摩擦による輸出規制が強化され、先行きには不透明感が漂っている。
★ドルの世界金融支配に風穴を開けるブロックチェーン
中国は「一帯一路」政策により新興国へ経済進出しようとしている。 ここでキーとなっているのがブロックチェーン技術である。
番組ではネット通販のアリババの、銀行を介さない決済システムを紹介した。これにより、銀行口座を持たない国の人たちが 瞬時にお金のやり取りができるようになる。香港とフィリピンを結ぶ決済システムができ、香港で出稼をしているフィリピン人がスマホで金額を入力して近くのコンビニで払えば故郷に送金できる。
フィリピンの田舎の島にすむ家族は、フィリピンの提携する両替所でお金を受け取れる。また、フィリピンの田舎の島で、銀行口座が無くてもアリババで買い物が出来るようになった。
《 ブロックチェーン技術(分散型台帳) 》
ブロックチェーン技術は、データセンター等に設置された大型のデータサーバーで
一括管理するのでなく、多くの「ブロック」と呼ばれる「サーバー」をネット経由でつなぎ合わせて構成される。
ネットにつながるコンピュータであれば、誰でもが「ブロック」になれる。
チェーン構成はシステムが自立的に行い、データは記録を含めて各ブロックに重ねて保存される。(分散型台帳)
国家による意図的な介入や封鎖などは不可能である。
また複数のサーバーを同時に書き換えないとデータ改ざんは出来ないので、改ざんはほぼ不可能である。
ドルの金融覇権に不満を持つ国は、中国の新しい金融システム(ブロックチェーン)に興味を示している。
例えばカザフスタンは一帯一路のルートの上にあり、経済発展を目指し、中国資金を積極的に受け入れている。カザフスタンは資源国で原油が収入源である。しかし原油取引はドル決済なので、 ドルの価格に収入が左右される不満がある。ブロックチェーンはドル通貨と関係ない取引ができる。このブロックチェーンによる決済は、ポーランドなど東欧なども関心を示している。
ブロックチェーンはドルによる金融覇権に風穴を開ける可能性がある。
(注1) (筆者による、追記画像 1)
外国為替市場の取引調査によれば、総取引額のうち、 ドル取引が43%、ユーロ取引が18%強、円が8%強・・である。
ドル以外の通貨との決済に当たっても流動性の高いドルを経由した方が、取引コストが安く済むことがドル取引シェアが高い理由となっている。
例えばロシアの会社がトルコの会社から何かを輸入するとしよう。その対価の支払い方が2 つある。
① ロシアからトルコへの支払いがドルで決済される場合、代金はドルに交換された後、ロシアの取引金融機関からトルコの取引金融機関へと支払われる。
実際にはその国際資金決済は、決済を行なう金融機関同士が米国にある金融機関に有する口座を介して決済資金の付け替えが行われている。ここを封鎖することを「ドル利用禁止」という。米国はイランやトルコなどにこの「禁止」を使って金融覇権を行使している。
② 「ルーブル⇒リラ」への直接交換は容易ではない。
直接交換が成立するためには、その反対取引となる「リラ⇒ルーブル」取引も必要となる。厚みのある「リラ・ルーブル間の外国為替取引市場」が必要となる。
(引用はここまで)